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妊婦に対する「抗菌薬アレルギー評価」の有用性を検証-成育医療センター

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2024年01月16日 AM09:20

自己申告の約9割は真のアレルギーではなかったとの報告も

国立成育医療研究センターは1月11日、分娩時の適正な抗菌薬使用を推進するため、妊婦に対する抗菌薬アレルギー評価の有用性についての研究を、日本で初めて報告したことを明らかにした。 この研究は、同センターアレルギーセンターの平井聖子医師らの研究グループによるもの。研究成果は、日本アレルギー学会和文誌「」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

分娩時には、感染予防・治療として抗菌薬の投与が必要となる場合がある。これまで「抗菌薬アレルギーがある」と自己申告があった場合、他系統の抗菌薬使用が行われてきたが、それでは本来使うべき抗菌薬が使えず、治療・予防効果が劣る可能性があった。妊婦においても一般人と同様に、自己申告された抗菌薬アレルギーの約9割は真のアレルギーではなかったとの報告もある。そこで、日本の妊婦においても抗菌薬アレルギー評価を行う意義があると考え、今回の研究を実施した。

(疑い含む)24人対象、4つの第一選択薬を分娩前に皮膚テスト

2021年10月から2022年7月に同センターのアレルギーセンターに紹介された抗菌薬アレルギー(疑い含む)の妊婦24人を対象に、妊娠中にアレルギー科医師が評価を行い、分娩の際に使用可能な抗菌薬を提案した。感染症専門医および産婦人科専門医と協議し、周産期に使用する第一選択抗菌薬を、/、セフメタゾールのいずれかとした。病歴から抗菌薬アレルギーである可能性が高い場合、第一選択薬のうちアレルギーが疑われる薬(および構造が似ている薬)以外の薬剤で皮膚テストを行い、皮膚テストが陰性であれば慎重に抗菌薬を使用可とした。妊娠中の被疑薬に対する検査も安全であるとする報告もあるが、今回は分娩時に使用できる適正な抗菌薬の選定を行うことに主眼を置き、被疑薬での検査は実施しなかった。

分娩時に実際に抗菌薬が必要だったのは21人、全員が安全に使用

その結果、アレルギーが疑われていた抗菌薬の多くは、ペニシリン系やセフェム系といった、分娩時に通常よく選択されるβラクタム系の抗菌薬だった。抗菌薬アレルギーを疑うに至ったエピソードは10年以上前(小児期)という人も4分の1程度いた。24人のうち、病歴の問診のみで抗菌薬アレルギーの疑いを否定できた人が5人、残り19人は全員皮膚テストを受けたが、その結果は全員陰性だった。24人中、分娩時の抗菌薬が不要であった3人を除いた21人で事前に提案した抗菌薬が投与され、その際の抗菌薬使用の適応理由は、帝王切開後手術部位感染予防が16例、B群溶血性連鎖球菌感染予防が7例(重複を含む)だった。

抗菌薬投与を行ったすべての妊婦において、帝王切開後手術部位感染を認めず、かつ、事前に提案した第一選択薬のいずれかが使用できた。また、妊娠中の皮膚テストおよび分娩時の抗菌薬投与によるアレルギー反応を呈した妊婦は認められなかった。なお、評価時にアレルギー反応が起こる可能性があることを理解しておく必要があり、事前にリスク評価を行った上で提案していた。

適正使用の推進につながる成果

今回、安全に配慮した抗菌薬アレルギー評価によって、妊婦に事前に提案した第一選択薬内の抗菌薬を投与することができた。この取り組みは、妊婦における適正な抗菌薬使用の推進につながると考えられる。「抗菌薬アレルギーがある、または疑われる場合には、治療時の抗菌薬選択の遅れ、代わりの薬を使うことによる治療効果低減、薬物関連の副作用増加、耐性菌の増加、治療費負担の増大などにつながることが報告されている。生涯において抗菌薬が必要となることはまれではない。薬物アレルギーの疑いを「疑い」のまま残しておくのではなく、積極的に適正診断することの重要性を広く啓発していきたい」と、研究グループは述べている。

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