小児がんへの従来の治療法は合併症が課題、より効果的・安全な治療法開発が望まれる
北海道大学は5月20日、抗GD2抗体を用いた光免疫療法が、神経芽腫・骨肉腫の細胞と、神経芽腫のモデルマウスに対して治療効果があることを示したと発表した。この研究は、同大病院小児・障がい者歯科の趙継美医員、小児科の真部淳教授、大学院薬学研究院の小川美香子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「EJC Pediatric Oncology」に掲載されている。

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近年、小児がんの生存率は向上しているが、転移や再発などで予後が悪く、助からない場合もある。また、従来の化学療法や放射線治療は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも作用するため、治療中や治療後にさまざまな合併症が生じる。そのため、小児がんに対して、より効果的で安全な治療法の開発が望まれている。
神経芽腫と骨肉腫で、抗GD2抗体を用いた光免疫療法の有用性を検討
光免疫療法は、がん細胞を特異的に死滅させる新しいがん治療法として注目されており、日本では頭頸部扁平上皮がんに対して臨床応用されている。今回の研究では小児がんの一種である神経芽腫と骨肉腫を対象として基礎実験を行い、光免疫療法の有用性について検討した。
神経芽腫および骨肉腫のがん抗原(GD2抗原)に対する抗体(抗GD2抗体)に光感受性物質を結合させた薬剤を精製した。神経芽腫と骨肉腫の細胞に対して、薬剤の投与と690nmの波長の光(赤外線)の照射により光免疫療法を行い、細胞への影響を評価。また、神経芽腫のモデルマウスに対して、同様に光免疫療法を行い、治療効果を評価した。
光免疫療法の効果を確認、細胞やモデルマウスの実験で
神経芽腫と骨肉腫の細胞に対する実験では、光免疫療法を行った後に、細胞が死ぬことが確認された。神経芽腫のモデルマウスに対する実験では、光免疫療法を行った群では、腫瘍の大きさが他の群よりも小さいことが確認された。また、病理組織学的な検査でも、光免疫療法を行った後に腫瘍組織が破壊されていることが確認された。
小児がんへの光免疫療法、副作用が少ない治療法として期待
光免疫療法は、治療効果が高く副作用が少ない治療法であり、小児がんに対しても将来的に治療の選択肢の一つとなる可能性がある。今後の臨床応用に向けて、効果的な治療の進め方や有害性の有無などについて、研究を進めていく予定である、と研究グループは述べている。
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