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H1抗ヒスタミン薬、日本人データから要注意の副作用と発症時期が判明-慈恵医大ほか

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2025年06月04日 AM09:30

国内で広く使用されているH1、有害事象の大規模な調査・分析は未実施

東京慈恵会医科大学は5月26日、日本の医薬品副作用報告データベースを用いて、22種類のH1抗ヒスタミン薬に関連する14の有害事象(AE)の報告件数と発症時期を後ろ向きに解析し、H1抗ヒスタミン薬で頻発する副作用の特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部医学科5年生の高塚美郁子氏、臨床薬理学講座の志賀剛教授、橋口正行教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

H1抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎、じんましん、その他のアレルギー性疾患および非アレルギー性疾患の治療に広く使用されており、一般的に安全であると考えられる。現在、H1抗ヒスタミン薬は第一世代と第二世代抗ヒスタミン薬の2種類がある。第一世代のH1抗ヒスタミン薬は血液脳関門を容易に通過し、中枢神経系(CNS)のH1受容体に結合し、CNSの機能を阻害する。また、ムスカリン受容体、αアドレナリン受容体、セロトニン受容体、心筋イオンチャネルを阻害する。そのため、第一世代のH1抗ヒスタミン薬は、口渇、排尿困難、頻脈、食欲亢進、めまい、QT延長、心室性不整脈などのさまざまな副作用(ADR)や、眠気、鎮静、傾眠、疲労などのCNS症状も引き起こす。第二世代のH1抗ヒスタミン薬はH1受容体に特異的であり、脂溶性で中枢神経系血管内皮細胞に発現するP糖タンパク質に親和性があるため血液脳関門を通過しにくく、CNSへの浸透性が低くなっている。その結果、これらのADR、特にCNS症状が少なくなっている。このようにH1抗ヒスタミン薬は一般に安全であると考えられているが、中には心毒性、CNS抑制、抗コリン作用などの副作用を経験する患者もいる。

近年、ファーマコビジランスや医薬品モニタリングなどの医薬品の安全性監視において、大規模データベースの活用が不可欠となっている。日本ではH1抗ヒスタミン薬がアレルギー性疾患を中心に広く使用されているにもかかわらず、そのAEの典型的な特徴について、大規模なリアルワールドデータを用いた系統的な調査・分析は行われていない。

PMDAのデータベース用い、22種類の抗ヒスタミン薬について14種類のAEを解析

今回研究グループは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提供されている医薬品副作用データベースJADER(Japanese Adverse Drug Event Report)を用いてH1抗ヒスタミン薬によるAEの特徴について検討を行った。抗ヒスタミン薬は第一世代(クレマスチン、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、プロメタジン)、第二世代(アリメマジン、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、セチリジン、デスロラタジン、エメダスチン、エピナスチン、エバスチン、フェキソフェナジン、ケトチフェン、レボセチリジン、ロラタジン、メキタジン、オキサトミド、オロパタジン、ルパタジン)の22種類の抗ヒスタミン薬について、高頻度で臨床的によく見られる14のAE(、血管浮腫、痙攣・てんかん、肝毒性、意識障害、スティーブンス・ジョンソン症候群、薬疹・中毒性発疹、多形紅斑、アナフィラキシー、再生不良性貧血、腎障害、間質性肺炎、血小板減少、無顆粒球症)を抽出し、性別と年齢を調整した報告オッズ比、およびワイブル分布を使用して発症までの時間イベントを解析した。

最も高い報告オッズ比は脱毛症56.6、重篤なAEは1週間以内に発症

報告オッズ比は脱毛症(56.6)で最も高く、次いで血管浮腫(3.2)、肝毒性(2.6)、意識消失(2.4)、スティーブンス・ジョンソン症候群(2.1)だった。AE発症までの期間は、アナフィラキシー、スティーブンス・ジョンソン症候群、薬物/中毒性発疹、血管性浮腫、けいれん/てんかんでは、H1抗ヒスタミン薬使用後1週間以内に発生していた。肝毒性、意識喪失、けいれん/てんかん、肺炎、再生不良性貧血は、H1抗ヒスタミン薬治療を通じて時間の経過とともに発生していた。今回の研究により、H1抗ヒスタミン薬について、アナフィラキシーや中毒性皮膚疾患などの重篤なAEは、治療開始後1週間以内に発症し、肝毒性や脱毛症、間質性肺炎、再生不良性貧血は治療期間中を通じて発症していることが明らかになった。

日常診療での薬物モニタリングなどへ活用に期待

H1抗ヒスタミン薬は、日本でもアレルギー疾患などで広く使用されているにもかかわらず、リアルワールドでのAEについては体系的に評価されていなかった。「この研究により、H1抗ヒスタミン薬を処方した患者において、特に注意すべき副作用と投与後の期間が明らかとなり、日常診療における薬物モニタリングやファーマコビジランスの指針として活用できることが期待される」と、研究グループは述べている。

 

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