68~86歳の高齢者136人対象、腸内細菌叢構成と脳内アミロイドβ蓄積との関連は?
東京都健康長寿医療センター研究所は11月27日、地域在住高齢者を対象に、腸内細菌叢の構成と脳内アミロイドβ蓄積との関連を調べた結果を発表した。この研究は、同研究所の小島成実研究員、笹井浩行研究副部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。

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アルツハイマー病は認知症の主な原因であり、脳内にアミロイドβが蓄積することが特徴である。近年、「腸―脳相関」と呼ばれる概念のもと、腸内細菌が脳の健康や疾患の進行に影響を与える可能性が注目されている。日本で暮らす高齢者は、米飯を中心とした和食を基盤に、魚介類、大豆製品、野菜、発酵食品などを多く摂取するなど、他国と異なる食習慣や食事パターンを持つことが知られている。こうした食環境のもとで腸内細菌との関係を明らかにすることには意義がある。
そこで今回の研究では、東京都在住の68~86歳の高齢者136人を対象とし、脳内アミロイドβ蓄積を陽電子放射断層撮影(PET)で評価。また、腸内細菌叢を便検体から解析(16S rRNAシーケンス)し、年齢・性別・抗菌薬使用歴を調整して統計解析を行った。
脳内アミロイドβ陽性群、炎症抑制・脳機能維持に関わるFirmicutes門の割合が有意に低下
研究の結果、対象者のうち34.6%がアミロイドPETで陽性であった。アミロイドPET陽性群と陰性群を比較すると、Firmicutes(ファーミキューテス)門の割合が、陰性群では56.8%、陽性群では52.6%と、陽性群で有意に低値であった。また、Firmicutes門の割合が中央値より高い群では陽性率が26.4%であったのに対し、中央値より低い群では42.6%と高く(χ2検定によるp=0.047)、両群間に有意な差が認められた。さらに、年齢・性別・抗菌薬使用を調整した二項ロジスティック回帰分析でも、Firmicutesの割合が低いことは脳内アミロイドβ陽性と有意に関連していた(オッズ比2.15)。他の腸内細菌や多様性指数(α・β多様性)では有意な差は見られなかった。Firmicutesは短鎖脂肪酸を産生し、それを介して炎症の抑制や脳機能の維持に関わることが知られている。
腸内環境を整える生活習慣が、認知症予防の一助となる可能性
今回の研究は、腸内細菌叢がアルツハイマー病発症に関与する可能性を日本人高齢者で初めてPET画像と併せて示したものである。今後、腸内環境を整える食事や生活習慣が、認知症予防の一助となる可能性がある、と研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース


