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急性ストレス時の脳由来エクソソームに不安緩和効果、マウスで確認-防衛医大ほか

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2025年12月11日 AM09:20

脳由来エクソソームと、ストレスや不安などの感情との関連は不明だった

防衛医科大学校は11月26日、強いストレスを受けたマウスの血液に含まれる「脳由来エクソソーム(脳の細胞から出る極小の袋状の粒子)」に不安を抑える働きがあることを明らかにしたと発表した。この研究は、航空自衛隊・航空開発実験集団・航空医学安全研究隊の溝端裕亮博士、防衛医科大学校の守本祐司教授と、同大の戸田裕之教授、古賀農人講師、太田宏之准教授、東京医科大学の落谷孝広特任教授、吉岡祐亮講師、株式会社ナノソミックス・ジャパンの小林泰信博士らとの共同研究によるもの。研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されている。


画像はリリースより
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エクソソームは、全身のあらゆる細胞が分泌する直径100nm程度の小さな袋で、マイクロRNAやタンパク質を内部に含む。分泌されたエクソソームは血液に乗って移動し、他の臓器や組織の細胞に取り込まれ、内包する物質によって遺伝子の働きや細胞内の情報伝達を変化させることで、生理的な応答を引き起こす。脳由来エクソソームは、神経の働きを維持することが知られていたが、ストレスや不安などの感情との関連はわかっていなかった。

そこで研究グループは今回、強いストレスを受けた際に脳から放出されるエクソソームの内容物と、それが体や感情に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

miR-199a-3p、miR-99b-3p、miR-140-5pに不安を和らげる効果があると発見

研究では、急性ストレスを受けたマウスの血液から脳由来エクソソームを回収し、その働きを調べた。まず、水浸拘束ストレス(1時間)を与えたマウスの血液から、脳由来エクソソームを回収。このエクソソームを別のマウスに静脈内または脳室内投与したところ、オープンフィールド試験および高架式十字迷路試験において、不安が弱まったときに特徴的にみられる行動(不安を感じるエリアでの行動の増加)が確認された。

次に、エクソソームの中身(マイクロRNA)を詳しく調べると、miR-199a-3pとmiR-99b-3p、miR-140-5pが顕著に増加していた。これらの3つを人工的につくって混ぜたものをマウスに投与すると、同じように不安が和らぐ効果が見られた。

最も重要なのはmiR-199a-3p、不安行動に影響するMecp2の働きを弱める働きをもつ

仕組みを調べるため、ニューロンなどを用いて検討したところ、3つのうち最も重要なのはmiR-199a-3pで、これがニューロンにおけるMecp2の働きを弱めることがわかった。Mecp2は神経の働きに関わる遺伝子で、この遺伝子の働きの変化が不安行動に影響することが知られている。

以上より、不安の改善を引き起こす仕組みとして、miR-199a-3p がニューロンのMecp2遺伝子に直接結合し、その働きを弱めることが示された。

エクソソームやマイクロRNAを使った新規精神疾患治療やストレス緩和法開発に期待

今回の研究により、世界で初めて、急性ストレス時の脳から出るエクソソームが不安を軽減させる可能性が示された。「今後、エクソソームやマイクロRNAを使った新しい精神疾患治療やストレス緩和法への応用が期待される。実用化には、ヒトでの検証、安全性評価、製剤化に向けた検討が今後の重要な課題になる」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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