脊椎手術データ3,275例を解析、過去の入院歴と術後の創部感染リスクの関連は?
群馬大学は11月14日、脊椎手術データを解析し、「過去の入院歴」が術後の創部感染リスクを大幅に高めることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科整形外科学の高澤英嗣研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Spine Open」に掲載されている。
脊椎手術後の創部感染は、入院期間の延長・医療費の増加・生活の質の低下などを引き起こし、時に生命にも関わる重要な合併症である。これまでの研究では、肥満や糖尿病など体質や持病による個人差、手術時間・出血量など手術による身体への負担などがリスク因子として明らかになっていた。
そこで今回の研究では、新たに「過去の入院歴」に着目。「入院歴」を過去の2日以上の入院と定義し(1泊の検査入院は含めない)、研究を進めた。群馬県内の大学病院・基幹病院・脊椎専門病院の3施設(群馬大学医学部附属病院、前橋赤十字病院、群馬脊椎脊髄病センター)と共同で、2019~2024年に行われた3,275例の脊椎手術データを解析した。
過去2日以上入院歴あり患者、感染リスク約7倍上昇
研究の結果、術後の深部創部感染は1.2%(40例)に発生し、過去に2日以上の入院歴がある患者は、入院歴のない患者に比べて感染リスクが約7倍に上昇することがわかった(感染率:入院歴あり4.0% vs. なし0.6%)。
入院から手術までの期間が短いほど、薬剤耐性菌感染が起きやすい傾向
さらに、入院から手術までの期間が短いほど、MRSA(多剤耐性黄色ブドウ球菌)などの薬剤耐性菌による感染が起きやすい傾向が確認された。
患者ごとに最適な手術時期を相談できる可能性
この研究成果は、脊椎手術の安全性向上に向けた新しい視点を提供するものであり、「入院歴」という日常診療で容易に得られる情報が、「手術タイミングの判断」や「感染対策の強化」に生かせる可能性を初めて示した。
今回の研究では、過去の入院歴が、患者の体内細菌バランスや薬剤耐性菌の保菌に影響を及ぼす可能性を明らかにした。今後、緊急手術を除く場合には、前回入院から一定期間を空けて手術を行うなど、患者ごとに最適な手術時期を相談できる可能性がある、と研究グループは述べている。
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・群馬大学 プレスリリース


