骨表面に固定するデバイス、侵襲性や耐久性などに課題があった
東北大学は11月26日、骨ミネラルと同じ成分の固体でありながら、軽く押し当てるだけで瞬時に骨の表面に接着可能なセラミック接着材を開発したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科の岡田正弘准教授、岡山大学、大阪大学との共同研究によるもの。研究成果は、「Bioactive Materials」にオンライン掲載されている。

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骨折部位を固定するプレートや骨の状態をモニタリングするインプランタブルセンサーは、骨表面に固定して使用されるデバイスである。これらは、スクリューによって物理的に固定、もしくは、生体用接着剤によって固定される。しかし、物理的な固定は侵襲性が高く、さらに「液体状のもの」を硬化反応させる接着剤は、硬化反応時の発熱や接着強さに課題があった。このため、これらの用途に簡便かつ迅速に使用できる技術の開発が強く望まれている。
アパタイトを用いた新たな接着剤を開発、軟組織に高い接着力示すが硬い骨には接着せず
研究グループは、リン酸カルシウムの一種であるアパタイトを原料として、生体組織と迅速かつ直接に接着する新しいタイプの接着材を開発していた。アパタイトは骨ミネラルと同じ成分であることから、生体親和性の高いセラミック材料として体内での使用が認められた原料だ。そこで、アパタイトナノ粒子の合成・成形・加熱処理によって多孔質を制御した接着材を作製し、さまざまな生体組織との接着を検討したところ、コラーゲンを主体とする真皮などの軟組織に高い接着力を示すことがわかった。一方、硬い骨には接着を示さなかった。
骨表層のミネラルを除去しコラーゲンを露出させると、迅速かつ直接接着することを確認
次に、骨発生過程における無機物と有機物の安定化状態の変化から着想を得て、骨表層のミネラルを除去(脱灰)してコラーゲンを露出させたところ、軟組織と同様に迅速かつ直接に接着した。
フィブリン糊の10倍以上の接着力、脱灰条件の変化でアパタイトの接着強さが変化
さらに、軟組織用接着剤として体内で使用可能なフィブリン糊に比べ、10倍以上の高い接着強さを示すことを発見した。また、骨の表層を脱灰する条件をコントロールすることでアパタイトの接着強さが変化することも見いだした。
骨表面に固定して使用する医療デバイスなどの簡便な固定処置への応用に期待
「本技術は、骨表面に固定して使用する医療デバイスや、世界的な普及が考えられるインプランタブルセンサーなどの簡便かつ迅速な固定処置への応用が期待される。今後、これらの実証実験を行っていく」と、研究グループは述べている。
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