心血管疾患の危険因子「Lp(a)」、日常診療での測定は普及していない
国立循環器病研究センターは11月27日、家族性高コレステロール血症(FH)患者において高Lp(a)血症が角膜輪やアキレス腱肥厚の出現に関与することを明らかにしたと発表した。研究成果は、「Journal of Clinical Lipidology」に掲載されている。

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FHは、血中のLDLコレステロール値が著しく上昇し、若年からの心血管疾患発症リスクが高い遺伝性疾患である。コレステロールの結合組織への沈着は、角膜輪やアキレス腱の肥厚といった特徴的な身体所見として現れ、従来診断の重要な手がかりとされてきた。一方、近年ではLp(a)が心血管疾患の独立した危険因子として注目されているが、日常診療においてその測定は必ずしも十分に普及していない。Lp(a)を構成するアポリポプロテイン(a)も結合組織に蓄積する性質を持つことから、FHにおける身体所見は、リポタンパク(a)の影響を受けている可能性があると考えられた。
日本人FH患者484人を解析、高Lp(a)値群で角膜輪・アキレス腱肥厚の頻度が上昇
今回の研究では、同センターで診療した日本人のFH患者484人を対象とした後ろ向き解析により、Lp(a)値と角膜輪およびアキレス腱の肥厚との関連性が検討された。心血管リスクが高まるとされるLp(a)値30mg/dL以上の患者は32%に及び、この群では角膜輪を有する頻度が高く、アキレス腱厚も有意に増大していた。角膜輪を有し、かつアキレス腱の厚さが14.0mm以上であった患者のうち56%がLp(a)値30mg/dL以上を示していた。
Lp(a)高値と身体所見の併存、予後不良と強く関連
さらに、15年間の観察期間中、Lp(a)値が30mg/dL以上かつ両身体所見を有する群では主要心血管イベント(心血管死亡+急性冠症候群+虚血性脳卒中)の発症率が25%に達しており、三者の併存が最も予後不良と関連していた。
身体所見の評価がLp(a)高値の手がかりに、心血管リスクの層別化に有用
今回の研究はLp(a)値がFHに特徴的な身体所見に影響を与えることを世界で初めて報告したものである。
「これらの結果から、角膜輪およびアキレス腱肥厚の評価は、Lp(a)高値を示唆する臨床的手がかりとなり、両者を併せた観察は、心血管リスクの層別化や治療戦略の判断において相補的かつ有用な情報を提供することが示された」と、研究グループは述べている。
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