医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 小児のナッツ類アレルギー、症状起こす摂取量の減少傾向が判明-成育医療センター

小児のナッツ類アレルギー、症状起こす摂取量の減少傾向が判明-成育医療センター

読了時間:約 2分41秒
2025年12月04日 AM09:20

10年間の食物経口負荷試験のデータをもとに、ナッツ類アレルギーの誘発閾値などを調査

国立成育医療研究センターは11月17日、日本人におけるナッツ類アレルギーを引き起こす摂取量を明らかにしたと発表した。この研究は、同センターアレルギーセンターの久保田仁美氏、福家辰樹氏、山本貴和子氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: Global」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、日本ではナッツ類アレルギーが急増し、アレルギーの原因食物の第2位を占めている。食物アレルギーでは、ナッツ類アレルギーは重篤な症状を引き起こすことがあり、科学的な根拠に基づく適切な食品表示が安全管理には欠かせない。近年、欧米を中心に、食品中の含有アレルゲンに対するリスク評価方法として、食物アレルギー患者における誘発閾値(ED: eliciting dose)解析が行われている。しかし、日本を含めアジア諸国でのED値データはほとんど存在せず、その実態は不明だった。

そこで研究グループは今回、同センターにおける10年間の食物経口負荷試験のデータをもとに、ピーナッツ、カシューナッツ、クルミにおけるアレルギー症状の誘発閾値と、その経年的変化について研究を行った。

小児1,275例を対象に症状誘発閾値を算出、特異的IgE値との関連も検討

対象となったのは、研究期間中(2013年11月~2023年12月)に食物負荷試験を受けた小児1,275例(ピーナッツ504例、カシューナッツ182例、クルミ589例)。対象者のピーナッツ、カシューナッツ、クルミに対する食物経口負荷試験の結果を、区間打ち切り生存時間分析を用いて複数分布モデルにより解析。調査項目はアレルギーのある人が、アレルゲンを摂取した際に症状を引き起こす最小量であるED01値、ED05値、ED10値とし、特異的IgE値との関連も解析した。

それぞれのED05値はピーナッツ4.88mg、カシューナッツ0.53mg、クルミ4.37mg

経口負荷試験データを用いて、ナッツ類それぞれのED05値を算出したところ、ピーナッツ4.88mg、カシューナッツ0.53mg、クルミ4.37mgと判明した。

アレルギーが起こる摂取量は低下傾向、特にクルミでは有意に減少

次に、2013~2019年と2020~2023年の期間でED05値を比べたところ、アレルギーを引き起こす摂取量は低下傾向にあった。これは、以前より少ない摂取量でアレルギー症状が引き起こされる可能性があると考えられた。

特にクルミでは、2019年以前は14.94mg(95%CI:9.60-23.2)だったが、2020年以降では3.26mg(95%CI:2.04-5.20)と有意に減少しており、日本におけるクルミアレルギー患者の増加や重症化などの変化が影響している可能性があることがわかった。なお、ピーナッツとカシューナッツでは有意差は認められなかったとしている。

特異的IgE値が高いほど、少ない摂取量でアレルギー反応が出やすい傾向

さらに、主要アレルゲン成分であるAra h 2(ピーナッツ)、Ana o 3(カシューナッツ)、Jug r 1(クルミ)に対する特異的IgE値が高いほど、ED値が低い傾向(少ない摂取量でアレルギー反応が出やすい傾向)が示された。

高IgE群(50 kUA/L以上)でのED05値は、ピーナッツ3.20mg、カシューナッツ0.55mg、クルミ1.92mgだった。

食物アレルギーのリスク評価を定期的に見直すことが重要

食習慣がグローバル化する中で日本国内における食物アレルギーの原因食物も変化している。今回の調査で、ナッツ類のED値は欧米で報告される値に近づきつつあり、食物アレルギーのリスク評価を定期的に見直す重要性が改めて認識された。

「日本ではナッツ類、特にクルミアレルギーの発症がこの10年間で急増しており、近年の消費量増加との関係が示唆されている。本研究では、アレルギー症状の誘発閾値が欧米と同等に近づいたこと、そして、日本国内でも時代とともに変化していることがわかった。今後も食品表示や食物経口負荷試験・経口免疫療法の設計に、日本独自のデータを反映させる必要がある」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 筋トレ前の高カカオチョコレート摂取、動脈スティフネス低下に有効-明治ほか
  • 子どもの希死念慮・自殺企図増加、神経症やせ症も増加で高止まり-成育医療センター
  • アルツハイマー病、腸内細菌叢が発症に関与の可能性-都長寿研
  • ATTRアミロイドーシス、ザクロ由来成分にアミロイド線維分解効果を発見-熊本大
  • 新規CETP阻害薬Obicetrapib、LDL-C値を有意に低下-大阪医薬大ほか