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強迫性障害に関わる根気と柔軟性、セロトニン3受容体が相反制御-大阪公立大

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2025年12月04日 AM09:10

「根気強さ」と関連が報告されるセロトニン3受容体、多くの機能は未解明

大阪公立大学は11月19日、セロトニン3受容体が認知機能においてどのような役割を果たしているかを明らかにするため、同受容体を欠損させたノックアウトマウスを用いて、オペラント条件づけによる複数の行動実験を実施した結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科脳神経機能形態学の中園智晶特任助教(研究当時)と近藤誠教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Behavioural Brain Research」に掲載されている。


画像はリリースより
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脳の中では、神経細胞同士が、さまざまな神経伝達物質を用いて信号を伝達し、情報処理を行っている。この神経伝達物質の一つであるセロトニンは、情動に関わる脳内物質として広く知られており、摂食行動や睡眠覚醒、情動、認知などさまざまな脳機能に重要であることがわかっている。このようなセロトニンに関わる多様な脳機能は、神経細胞がセロトニンの信号を受け取るメカニズムであるセロトニン受容体にいくつものバリエーションがあり、それぞれが異なった機能を持っていることによると考えられる。その受容体の一つであるセロトニン3受容体は、神経細胞をダイレクトに活動させるイオンチャネル型受容体として働き、他のセロトニン受容体と異なった機能を持つと考えられている。近年の研究では、この受容体が根気強さを生み出すメカニズムの一つであると明らかにされたが、その他の機能には不明な点が多く残っていた。

セロトニン3受容体欠損ノックアウトマウスと健常マウスの行動を比較

今回の研究では、セロトニン3受容体が認知機能にどのような役割を果たしているのかを明らかにするため、遺伝子組み換えによりセロトニン3受容体を欠損させたノックアウトマウスを用いて実験を行った。オペラント条件づけを用いた複数の行動課題を実施し、ノックアウトマウスと健常マウスの行動を比較した。

セロトニン3受容体欠損で「根気」を失ったノックアウトマウス、高い「柔軟性」を発揮

まず、「これまでに学習した行動では報酬(エサ)が得られなくなる」という消去課題においては、ノックアウトマウスは健常マウスよりも早く行動を中止する傾向が見られた。この結果から、先行研究で報告されていたセロトニン3受容体の「根気強さ」への関与を確かめることができた。さらに、「これまでとは違う行動をすることで報酬が得られる」というルール切り替え課題を行ったところ、ノックアウトマウスは健常マウスよりも早く学習することができた。これは、セロトニン3受容体を持たないことで「根気」を失っていたノックアウトマウスが、その一方で高い「柔軟性」を発揮することを示している。これらの結果から、セロトニン3受容体は「根気強さ」を強める働きを持つ一方で、「柔軟性」を抑制する働きがあることが明らかになった。

セロトニン3受容体の機能異常、SSRI効果なしの強迫性障害関与の可能性

今回の研究成果は、セロトニン3受容体の機能異常が選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果が見られない強迫性障害に関与している可能性を示唆しており、今後の病態解明や新たな治療法の開発に貢献することが期待される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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