モバイルヘルスアプリによる行動変容効果、研究は不十分
大阪大学は5月21日、大阪府が運営するモバイルヘルスアプリ「アスマイル」のパーソナルヘルスレコード(PHR)データを利用し、アプリ利用開始後の歩数の増加量をAIモデルで分析した結果を発表した。この研究は、同大キャンパスライフ健康支援・相談センターの大山飛鳥特任助教(現招へい研究員)、土岐博名誉教授、山本陵平教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medical Internet Research」に掲載されている。

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これまで、モバイルヘルスアプリの利用によって健康意識の向上に効果的であることは示されてきたが、行動変容への効果は十分に研究されていなかった。特に、スマートウォッチなどのウェラブルデバイスやスマホアプリを用いた研究では、研究に参加可能な人数や対象集団が限定され、効果検証のためのデータが十分に集まらないといった課題や、研究目的でデバイスを利用することによって、日頃よりも健康に意識した行動を取りやすくなるといった心理的要因によるバイアスが生じやすいという課題があった。
大阪府運営モバイルヘルスアプリ会員8万689人対象、利用前後の歩数変化を分析
研究グループでは、大阪府が運営するモバイルヘルスアプリ「アスマイル」の会員8万689人を対象にして、アスマイル利用開始前後の日常的な歩数の変化を分析。その歩数増加効果を推定した。従来の統計手法では、アプリ利用開始による歩数増加効果を推定するために、アプリを利用していない対照群が必要である。今回の研究では、Causal Impactと呼ばれる因果推論AIモデルを用いて、アスマイル利用開始前の歩数や天候等のデータからアスマイル利用開始後の擬似対照歩数を推定した。擬似対照歩数と実際の歩数を比較することによって、アスマイル利用開始後の歩数増加効果を分析した。
1日約360歩「増」、歩数少集団・若年者で効果大きく
研究の結果、1日あたり約360歩、28日間の累積で約1万歩の歩数増加効果が認められた。特に、アスマイル利用開始前の歩数が少ない集団や若年者で歩数増加効果が大きく、季節も大きく影響することが明らかになった。
モバイルヘルスアプリの利用推進、生活習慣病予防などに期待
今回の研究成果により、モバイルヘルスアプリによる短期的な歩数増加効果が明らかになった。モバイルヘルスアプリの利用推進が、身体活動量の増加、さらには生活習慣病の予防や健康寿命延伸につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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