医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 脳微小出血や脳梗塞、腎機能低下が再発リスクの可能性-国循

脳微小出血や脳梗塞、腎機能低下が再発リスクの可能性-国循

読了時間:約 1分51秒
2025年06月10日 AM09:10

腎機能低下に合併の脳微小出血、頻度・臨床的意義は不明

国立循環器病研究センターは5月26日、腎機能が悪くなっていくと、脳の深い部分にある基底核の微小脳出血が増えるだけでなく、皮質と基底核の両方にある混合型の脳微小出血や皮質だけにある脳微小出血も多くなることを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター脳血管内科の三輪佳織医長、塩澤真之医師、古賀政利部長、豊田一則副院長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

腎機能の低下は、年齢だけでなく、高血圧や糖尿病といった血管の危険因子が原因で、脳卒中の発症リスクだけでなく、MRIで初めて診断される無症候性の脳小血管病のリスクだ。脳小血管病の一つである脳微小出血は、頭部MRI検査で偶然発見される微小な出血である。脳微小出血の存在は、将来の脳出血や脳梗塞発症のリスクと関連している。脳微小出血の発症原因として、高血圧と血管壁にアミロイドが蓄積する脳アミロイド血管症があり、原因によって、脳微小出血がおこる部位は異なる。高血圧が原因の場合は、主に脳の深部基底核におこり、脳アミロイド血管症が原因の場合は、脳の皮質に限局することがわかっていた。一方、腎機能低下に合併する脳微小出血の頻度やその臨床的意義は、明らかではなかった。

脳梗塞後再発予防に抗血栓薬内服患者の脳微小出血を評価、eGFRデータあり1.1万人対象

国際共同レジストリMICON研究は、脳梗塞後の再発予防として抗血栓薬を内服している患者について、頭部MRIで脳微小出血を評価している複数の研究のメタ解析。今回の研究は、その中から、登録時に腎機能の指標である推定糸球体濾過量(eGFR)のデータのある1万1,175人を対象とした。

腎機能低下進行、皮質/皮質・深部の脳微小出血に多く認められる

腎機能低下の指標であるeGFR 60 ml/min/1.72m2未満の頻度は、2,815(25%)認められ、腎機能低下の進行は、皮質の脳微小出血と混合型(皮質と深部)の脳微小出血により多く認められた。さらに、腎機能低下は、・脳出血の複合イベントや脳梗塞の発症リスクが脳微小出血からも独立して発症リスクを高めた。

腎機能の低下は抗血栓薬治療中の脳卒中再発ハイリスク、適切な治療が必要

今回の研究により、腎機能の低下が進むと、脳の深部だけでなく、皮質にも脳微小出血が見られたことから、腎機能低下に伴う特有の病態(尿毒素の蓄積、酸化ストレス、慢性炎症)が関係していると考えられた。「腎機能の低下は、抗血栓薬治療中でも脳卒中再発のハイリスクであり、より積極的で適切な治療が必要と言える。すなわち、腎機能を維持する生活習慣や治療がカギであり、脳卒中予防ならびに脳小血管病予防に重要であると言える」と、研究グループは述べている。

 

同じカテゴリーの記事 医療

  • がん抗原特異的なヘルパーT細胞応答を高める改変エクソソームを開発-金沢大
  • 「睡眠学習」が生じる条件の理論的予測に成功、シナプス結合がカギ-東大ほか
  • 胆道がんの予後と治療抵抗性、KRAS遺伝子変異が関連と判明-慶大ほか
  • 抗NMDA受容体脳炎、新薬候補ART5803の有効性をサルで確認-Arialysほか
  • コロナ感染・重症化リスク、社会的孤立で低減・孤独感で上昇の傾向-都長寿研
  • あなたは医療関係者ですか?

    いいえはい