指先の毛細血管は全身状態の変化を反映する
電気通信大学は5月26日、指先の毛細血管の観察により血液成分の変化を非侵襲で捉えることに成功したと発表した。この研究は、同大機械知能システム学専攻の鈴木大樹特別研究員(当時)、正本和人教授らの研究グループと帯広協会病院の三浦一郎医師、株式会社徳の河越景史氏との共同研究によるもの。研究成果は、「Geroscience」に掲載されている。

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「毛細血管顕微鏡画像法」は、体の最も細い毛細血管を非侵襲で直接観察できることから健康、保健、美容などのさまざまな分野で広く普及している。指先の毛細血管は微小循環の窓とも呼ばれ、全身循環の変化を鋭敏に反映することが知られている。
そこで今回の研究では、腎疾患患者の透析治療前後に撮影した毛細血管顕微鏡画像を解析し、採血によって得られた血液成分の変化と連動して変化する信号成分を探索した。
透析前後における毛細血管画像情報と血液成分の相関を解析
腎疾患患者(71±14歳、男女11人)を対象に、透析治療の直前と直後に爪郭部の毛細血管を毛細血管顕微鏡画像法により撮影した。画像から、研究チームが開発した独自の解析ソフトウエアを用いて毛細血管の形や血液の流れ、画像の明るさやコントラストなど計22項目の画像情報を取得した。得られた画像情報は、透析前後に行った採血の結果と詳細に比較し、血液成分との相関を調べた。
特定の血液成分と連動する画像信号を発見
血液透析の前後に測定した毛細血管顕微鏡画像と血液検査の結果を比較した結果、血液中の尿素窒素、コレステロール、無機リンやマグネシウムの濃度などと連動して変化する画像信号を発見した。一方、従来の評価手法である毛細血管の形や流速の計測では、血液透析前後において統計的に有意な違いは得られなかった。
毛細血管が視認困難でも血液の状態変化を捉える方法を開発
また、腎疾患患者の毛細血管画像は不鮮明な場合が多く、ソフトウエアで解析できた症例数は全体の約70%にとどまった。そこで、毛細血管がはっきりと見えない状態でも評価できる方法について検討したところ、毛細血管周囲の組織の画像信号にも血液の状態変化を反映する信号成分が存在することが判明した。
非侵襲でモニタリングできる血液ヘルスケア技術への応用に期待
今回の研究によって、腎疾患で毛細血管の形がはっきりと見えない場合でも、指先組織の顕微鏡画像から特定の血液成分の変化を捉えられることが示された。この成果により、微小循環の健康状態を非侵襲でモニタリングし、患者個別の心血管リスクを日常的に管理することが可能になると考えられる。
「今後は、日常の生活において非侵襲で血液の状態をモニタリングする血液ヘルスケア技術への応用・発展が期待される」と、研究グループは述べている。
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