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関節リウマチ、再生医療へ応用可能な滑膜線維芽細胞サブセットを発見-東京医歯大ほか

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2022年04月04日 AM10:45

患者由来滑膜線維芽細胞、・THY1発現が異なる3つのサブセットを詳しく解析

東京医科歯科大学は3月29日、関節リウマチや変形性関節症における滑膜線維芽細胞の3つのサブセットのうち、CD34++滑膜線維芽細胞が高い骨芽細胞・軟骨細胞分化能を有することを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ学分野の保田晋助教授、故・溝口史高元講師、野田聖二特任助教の研究グループが、同再生医療研究センター、同運動器外科学分野グループ、日本鋼管福山病院、苑田会人工関節センター病院との共同研究として行ったもの。研究成果は、「Arthritis Research & Therapy」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

関節リウマチは、免疫の異常により全身の関節に腫れや痛みを生じ(炎症)、骨や軟骨といった関節組織の破壊により変形をきたす疾患。関節を形成する滑膜とよばれる組織が炎症の首座であり、病理的には滑膜組織にリンパ球などの免疫細胞が浸潤し、滑膜線維芽細胞が増生している。近年、関節リウマチの治療法は大きく進歩し、免疫細胞やそれらが産生するサイトカインを標的とした分子標的薬が多数開発され、臨床で用いられている。一方、これらの分子標的薬を用いても関節炎を完全には抑えられない患者がいることや、過度な免疫抑制による感染症が問題となっている。また、一度破壊された関節組織は修復できず、外科手術などなしでは変形が永続的に残ってしまうことも問題となっている。以上から、関節リウマチ治療におけるアンメットニーズは、従来の抗リウマチ薬で効果不十分な患者に過度な免疫抑制をきたすことなく有効であり、破壊された関節組織を修復できるような新しい治療法の開発だ。

研究グループは、現在の関節リウマチ治療の限界を打破するべく、AMED免疫アレルギー疾患実用化研究事業の委託のもとに滑膜線維芽細胞を標的とした治療戦略の開発を目指している。患者由来滑膜線維芽細胞のシングルセルRNAシークエンシング解析により、滑膜線維芽細胞は表面マーカーであるCD34およびTHY1の発現パターンから、増殖能、浸潤能、炎症性サイトカイン産生能などの機能の異なる3つの主要なサブセット(CD34-THY1-、CD34-THY1+、CD34+THY1+)に分かれることが最近明らかとなった。CD34-THY1+サブセットは変形性関節症に比べ関節リウマチで増加しており、関節破壊に関わる浸潤能が高く、CD34+THY1+サブセットは炎症性サイトカインを高産生することから、どちらも関節リウマチの病態への関与が想定されていた。一方、以前から滑膜線維芽細胞には間葉系幹細胞様の多分化能が存在することが報告されており、関節リウマチの再生医療への応用が期待されていた。そこで今回、研究グループは、新たに同定された滑膜線維芽細胞サブセットの骨芽細胞や軟骨細胞への間葉系幹細胞様の分化能を比較検討し、骨・軟骨分化能に重要なシグナル分子を同定することを試みた。

炎症性サイトカイン産生のCD34+THY1+サブセット、骨芽細胞や軟骨細胞への分化能「高」

今回の研究は、同大および協力医療機関で行われた70名(関節リウマチ患者:18名、変形性関節症患者:52名)の膝人工関節置換術の際に、患者様の同意を得た上で提供された滑膜組織を使用して行われた。滑膜組織から酵素処理をして滑膜線維芽細胞を単離し、セルソーターを用いてCD34、THY1の発現に応じて3つの滑膜線維芽細胞サブセットに分離した。分離した3つのサブセットにおける間葉系幹細胞に特徴的な表面分子の発現をフローサイトメトリーで調べた。また、分離した各滑膜線維芽細胞サブセットを骨芽細胞、軟骨細胞および脂肪細胞へ分化させるための専用培地で3週間培養し、それぞれの細胞への分化について組織染色や定量的PCRで評価した。

間葉系幹細胞の表面マーカーの発現について評価したところ、骨芽細胞分化に優れた間葉系幹細胞において発現している分子(THY1、CD73)は、CD34+THY1+サブセットにおいて強く発現しており、その傾向は、関節リウマチと変形性関節症いずれにおいても同様であることが判明した。次に、骨芽細胞への分化能に関して骨芽細胞分化による石灰化の形成を赤く染める染色法(アリザリンレッド染色)や骨芽細胞を青く染める染色法(Alkaline phosphatase、ALP染色)にて評価したところ、CD34+THY1+サブセットが関節リウマチと変形性関節症由来いずれでも、3つのサブセットの中で優れていることがわかった。

組織学的な評価に加えて、骨芽細胞分化を促進する転写因子であるRUNX2や骨芽細胞が分泌するALPのmRNA発現も同サブセットで高値だった。また、軟骨細胞分化能に関しても、各サブセットから形成された軟骨ペレットの大きさと軟骨基質を赤く染める染色法(サフラニンO染色)によって評価したところ、CD34+THY1+サブセットが最も優れていることがわかった。また、軟骨基質であるアグリカンのmRNA発現も同サブセットで高値だった。なお、脂肪細胞への分化能に関しては、各サブセットとも同様に低値だった。

THY1が滑膜線維芽細胞の骨芽細胞分化能を促進

滑膜線維芽細胞サブセットの表面マーカーとして用いたTHY1は、細胞質膜に存在するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカータンパク質の1つであり、間葉系幹細胞の骨芽細胞分化におけるシグナル分子としても報告されている。THY1の発現はCD34+THY1+サブセットで最も高かったことから、CD34+THY1+サブセットにおける高い骨芽細胞・軟骨細胞分化能にTHY1が関与している可能性が考えられた。このため、滑膜線維芽細胞におけるTHY1をsiRNAによりノックダウンしたところ、骨芽細胞への分化が抑制されることが、組織学的(アリザリンレッド染色、ALP染色)およびRUNX2とALPのmRNA発現の評価によって示された。

今回の研究によって、最近新たに同定された関節リウマチの滑膜線維芽細胞サブセットのうち、炎症性サイトカインを高産生することから悪玉と考えられていたCD34+THY1+サブセットが、骨・軟骨の修復・再生に関与する善玉サブセットとしても機能しうることが明らかとなった。また、CD34+THY1+サブセットに高発現するTHY1が、この高い骨・軟骨分化能に関与することもわかった。今回の研究成果について研究グループは、「CD34+THY1+サブセットの高サイトカイン産生能を抑制し、骨・軟骨分化能を高めるような治療薬が、従来の抗炎症のみならず関節再生にも働く新しい抗リウマチ薬となる可能性を示している。また、CD34+THY1+サブセットにおけるTHY1の発現や機能を制御する薬がこのような治療薬として期待される」と、述べている。

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