iMCDの一亜型「iMCD-TAFRO」は、いまだ原因不明で治療法も未確立
岡山大学は5月22日、指定難病「特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)」の病態形成に深く関わる遺伝子群を同定したと発表した。この研究は、同大大学院保健学研究科分子血液病理学の原武朋加大学院生、学術研究院保健学域の西村碧フィリーズ講師、佐藤康晴教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Modern Pathology」のオンライン電子版に掲載されている。

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iMCDの一亜型である「iMCD-TAFRO」は、血小板減少や胸腹水貯留などの激しい症状を呈し、しばしば致死的な経過をたどる、まれなリンパ増殖性疾患。罹患したリンパ節では血管増生が目立つことを特徴とする。近年ようやく診断基準が確立したものの原因はいまだ不明で、確立された治療法もないのが現状だ。また、まれな疾患であるため、世界的に十分な研究がなされていないことが問題となっている。
PI3K-Aktシグナル伝達経路の亢進を確認、活性化に炎症性サイトカインが関与
研究グループは今回、iMCD-TAFROにおいて特徴的に発現が亢進している遺伝子について検討した。その結果、PI3K-Aktシグナル伝達経路の亢進を突き止めた。
この遺伝子群は、血管内皮細胞の増殖を起こしたり、血管内皮細胞間の結合を弱めたりすることで、iMCD-TAFROに特徴的なリンパ節における血管増生や、胸腹水の貯留や浮腫を引き起こしていると考えられる。さらに、この遺伝子群の活性化には炎症性サイトカインと、その受容体であるVEGFAおよびPDGFRBが関与していることが明らかになった。
iMCD-TAFROの新規治療法開発への寄与に期待
今回の研究により、iMCD-TAFROの病態形成に深く関与している遺伝子群が同定された。この遺伝子群がiMCD-TAFROの研究に携わる世界各国の多くの関係者に広く認知されることで、より良い治療法の開発や、さらなる病態解明につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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