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【薬害オンブズ会議】「アビガン」、過剰な期待に警鐘-治験で有効性の証明必要

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2020年05月13日 AM10:48

薬害オンブズパースン会議は、富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「」(一般名:)について、「観察研究」として行われている適応外使用や承認申請された場合に慎重な対応を求める意見書を加藤勝信厚生労働相に提出した。同会議は、アビガンが季節性インフルエンザの治療薬として承認申請されたものの、「」との比較で非劣性が示せなかったばかりか、プラセボと比較した堅固な有効性の証明にも失敗した「極めて異例の手続きで承認された薬剤」と指摘。新型コロナウイルス感染症治療薬として、過剰とも言える期待を集めている状況に強い危惧を示した。

意見書では、季節性インフルエンザを対象としたアビガンの臨床試験で「プラセボに対する優越性を示すことができたのは一つのみである」と指摘。それにも関わらず、備蓄用という特殊な承認条件で承認されたアビガンが、新型コロナウイルス感染症治療薬として過剰な期待を集めていることに警鐘を鳴らした。

同会議は、アビガンの新型コロナウイルス感染症にに対する有効性について、「国内の臨床試験が開始されたばかりで結果が出ておらず、現時点で有効性が明らかでない」と指摘。また、季節性インフルエンザに対する堅固な有効性は認められなかったとして、「ランダム化比較臨床試験における統計的な有意差の確認という原則的方法による証明が必要」と訴えた。

その上で、「著名人がアビガンを服用して治ったなどとしてそれがあたかもアビガンの効果であるかのように受け止められる報道や、投与後の治癒事例に基づいて過剰な期待を煽る識者のコメントを紹介する報道なども見受けられる」と苦言を呈し、「アビガン投与後に症状軽快が認められた症例があるからといって、それをもって新型コロナウイルス感染症に対する有効性があると判断することはできない」と断じた。

また、安全性について、動物実験で初期胚の致死と催奇形性が確認されていること、アビガンのリスク管理計画(RMP)にショック、肺炎、意識障害などの疾患が記載されていると指摘。インフルエンザ対策として備蓄目的で承認され、市販されて流通したことがないとして、多数の人に使用された場合に未知の副作用が生じる可能性にも懸念を示した。

「観察研究」として行われているアビガンの適応外使用にも懸念を表明。新型コロナウイルスに対する有効性は確認されていないことや強い催奇形性等の副作用があること、抗インフルエンザウイルス薬としての有効性と安全性が確認されないまま異例の手続きで備蓄用として承認された経緯、臨床使用の経験が乏しい医薬品であることなどについて、十分な情報提供と同意が必要とし、「改めて倫理的な原則に立ち返り、慎重な対応をすることが求められる」と訴えた。

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