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大学生の孤独感が「コロナワクチン忌避行動」につながる可能性-科学大ほか

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2025年06月13日 AM09:30

日本の大学生を対象に、社会的孤立と孤独感を区別してワクチン忌避行動との関連を調査

東京科学大学は6月3日、四大学連合ポストコロナ社会コンソーシアムによるプロジェクトとして、大学生の新型コロナワクチン忌避行動において、「」ではなく「」がリスク要因であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科の後藤夕輝助教、同・公衆衛生学分野の藤原武男教授、東京外国語大学の中山俊秀教授、一橋大学の佐藤主光教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

新型コロナウイルス感染症の流行下において、2020~2021年度の大学ではオンライン授業が主流となり、学生のキャンパスへの立ち入りが制限されるなど、他者との交流機会が大幅に減少した。このような環境は、学生の「社会的孤立(客観的に人との接触が少ない状態)」や「孤独感(望ましい人間関係が得られないことによる主観的な感情)」を高める要因となり得る。

一方、若年層におけるワクチン接種は、感染拡大の防止や重症化の予防という観点から極めて重要だが、一定の割合で「(接種が可能である状況にもかかわらず、接種を遅らせたり拒否したりすること)」が見られる。これまでの研究では、社会的孤立や孤独感がワクチン接種行動に影響を与える可能性が指摘されていたが、両者を区別した上で、日本の大学生におけるワクチン忌避との関連を明らかにした研究は限られていた。

そこで研究グループは、東京に所在する4大学(東京医科歯科大学(当時)、、東京工業大学(当時)、)の学生を対象に、2022年3月にオンラインアンケート調査を実施し、2,907人から有効な回答を得た。調査では、新型コロナワクチンの接種状況、社会的孤立(過去1年に週1回以上会う友人数)、孤独感(UCLA孤独感尺度)、および個人背景に関する情報を収集し、統計解析を行った。

孤独感の高い学生がワクチン忌避する可能性は約2倍、孤独感がリスク因子と判明

その結果、孤独感が高い学生は、そうでない学生に比べ、ワクチン忌避の可能性が約2.08倍高いことが明らかになった。この傾向は年齢・性別・経済状況・健康状態などを考慮しても統計的に有意だった。このことから「孤独感がワクチン忌避の有意なリスク因子」となることがわかった。

社会的孤立とワクチン忌避の関連は限定的

一方、客観的に友人と会う頻度が低い「社会的孤立」の状態にある学生とそうでない学生との間には、ワクチン忌避傾向に有意な差は見られなかったため、社会的孤立との関連は限定的であることが判明した。

これらのことから、両者は中程度の相関があるものの必ずしも一致するものではなく、孤独感は主観的な要素として、ワクチン忌避に影響を与える独立した因子である可能性が示された。

学生の孤独感に着目した心理的サポートの充実が、接種率向上の鍵となる可能性

今回の研究結果は、若年層、特に大学生におけるワクチン接種推進策を考える上で、「孤独感」という心理的要因の重要性を示している。これまでのワクチン施策は、情報提供や接種機会の整備が中心だったが、今後は学生の孤独感に着目した心理的サポートの充実が、接種率向上の鍵となる可能性がある。

学校や地域社会においては、学生の孤独感を軽減するための取り組み(例えば、相談しやすい環境の整備、学生間の交流促進、メンタルヘルス支援の強化など)が、間接的にワクチン接種率の向上に寄与する可能性があり、将来起こり得る新たな感染症のパンデミック対策にも応用できると考えられる。

「本研究は横断的な調査であり、孤独感とワクチン忌避との因果関係を直接的に証明するものではない。今後は、時間的な因果関係を検証するための縦断研究や、学生の孤独感を軽減する具体的な支援プログラムを導入し、その効果を検証することが望まれる。また、対象が東京の大学生に限定されていたため、他地域や異なる年齢層における知見の応用可能性についても、今後検討していく必要がある」と、研究グループは述べている。

 

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