
藤原氏は、日本に本社がある製薬企業主導の臨床試験数が年々減少する一方、米国承認・日本未承認の新有効成分の過半数がEBP起源である状況を説明した。EBPによる医薬品開発は、早期開発は単一国に依頼し、国際共同治験を選ばない手法を取る。
藤原氏は「治験実施医療機関の選定で重視するのは治験をスムーズに行える能力で、重要なのは英語によるコミュニケーション」と語った。英語で契約し、IRB(治験倫理審査委員会)審査などコミュニケーションの取れる医療機関をEBPは選択しているとした。
医療機関の科学的レベルが高いことも条件に挙げた。「医療機関の科学的レベルが高いことが世界的に認知され、治験責任医師も世界で認知されていないと依頼は来ない」とし、「EBPに選ばれる医療機関にならないといけない。SMOやCROに頼りすぎる医療機関は淘汰される」と警鐘を鳴らした。
また、「長年、様々な公的研究費を投入し続けてきたシーズ開発だけでは、わが国の創薬力回復・維持は不可能」と指摘。世界に通用する臨床試験成績を早く取得でき、有望なシーズが国際的な目線で選別される開発環境を醸成する施策を求めた。
投資すべき領域として、病院における臨床試験を米国水準で実施できる体制整備を求め、第I相試験実施施設は非臨床から臨床に橋渡しするトランスレーショナルリサーチ実施能力が必須になるとした。
人材育成にも投資が必要との考えを示した。医師のみならず、生物統計家、リサーチナース、CRC、モニター、監査担当者に加え、英語で契約書をやり取りできる事務職員を含めた多職種人材を育て、国際レベルの臨床試験を実施する環境整備につなげるよう提言した。
一方、製薬業界から指摘されている日本の治験コスト高については「私が実施した国際共同治験の経験からは、日本の治験コストが高いかと言えばノーだ。もし高いと言うのであれば、企業には支出内容の内訳を開示してほしい。そうでないと対応策を議論できない」と述べた。
また、日本の薬事規制が保守的であるために、日本発のイノベーションが阻害されているかとの問いにも「それは違う」と否定。「日本のアカデミアは臨床試験実施経験や薬事に関する知識が不足している人がいる。それゆえに『規制が悪い』と言ってしまう」と述べ、医学・看護学における卒前・卒後教育の改革などにも言及した。