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「ナノ化ミノキシジル」で発毛効果が早まる可能性、マウスで効果確認-大正製薬ほか

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2025年06月12日 AM09:20

アラビアガムを用いた新規ナノ粒子化ミノキシジル製剤の薬物送達性や発毛効果を検討

大正製薬株式会社は6月2日、ナノ化ミノキシジルによる早い発毛効果とそのメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同社と近畿大学薬学部医療薬学科製剤学研究室の長井紀章教授らとの共同研究によるもの。研究成果は、「Biological and Pharmaceutical Bulletin」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ミノキシジルは、発毛効果が認められた有効成分として壮年性脱毛症における発毛などを目的に国内外で広く用いられている。しかし、その治療効果を最大限に引き出すためには、作用部位と考えられる毛包へミノキシジルを効率的に届ける必要がある。

研究グループはこれまで、湿式粉砕法を用いてミノキシジルをナノ粒子化する技術を共同で開発し、国内最大濃度となる5%のミノキシジルを配合したナノ粒子製剤の製造に取り組んできた。先行研究では、ナノ粒子化されたミノキシジルが、作用部位と考えられている毛包への送達性を高め、発毛効果が早まることを確認している。

今回の研究では、医薬品の添加物として汎用される「」を新たに用いたミノキシジルのナノ粒子化技術を開発。同技術を用いて製造したナノ粒子化ミノキシジル製剤(以下、同ナノ製剤)について、安定性・薬物送達性の向上、および発毛効果と毛包細胞への影響を詳細に検討した。

アラビアガム配合で製剤品質を維持しつつ、粘度を約30分の1に低減させることに成功

これまでに、ミノキシジルを直径約100nm(1nmは100万分の1mm)の大きさまで微細化(ナノ粒子化)することによって、ミノキシジルの毛包への移行が促進され、発毛効果が早期に発現することを明らかにしてきたが、今回アラビアガムを配合してナノ粒子化することにより、ミノキシジルをナノ粒子化するための粉砕効率や、分散安定性など製剤の品質を維持しつつ、製剤の粘度を約30分の1まで低減させることに成功し、外用剤としての使用感を改良できる可能性を見出した。

薬物送達性の向上を確認、吸収ルートの違いが影響している可能性

さらに、作用部位である毛包へとミノキシジルを効率的に届けることができているか確かめるため、マウス背部皮膚を用いた薬物濃度評価試験を実施した。その結果、従来のローション剤と比較して、同ナノ製剤では皮膚中・毛包上部(バルジ領域付近)・毛包下部(毛球部付近)のミノキシジル濃度が増加したことから、同ナノ製剤によって作用部位への薬物送達性が向上することを確認した。

皮膚に塗布された薬物が体内に吸収される経路には、肌のバリア機能を担う角質層を介する「角質層ルート」と毛包や汗腺などを介した「附属器官ルート」がある。薬物が分子レベルで溶解しているローション剤は、普通は角質層ルートで吸収されるが、約100nmの大きさのナノ粒子や数μmの大きさのマイクロ粒子は角質層を通過することができない。一方、ナノ粒子は毛穴に侵入できる大きさのため、附属器官ルートの一つである毛包を介して吸収されている可能性がある。これらの吸収ルートの違いが、作用部位への薬物送達性の違いとして表れたと推察された。

マウスによる検証で、より早期・顕著な発毛促進効果を確認

さらに、今回開発した同ナノ製剤による発毛効果について、マウスを用いて評価した。その結果、同ナノ製剤は従来のローション剤と比較して、より早期かつ顕著な発毛促進効果を示した。

また、毛包組織における細胞増殖や分化に関連する指標となるタンパク質の遺伝子発現量およびタンパク質産生量について解析を行った結果、同ナノ製剤を使用した群では、毛包幹細胞や毛乳頭細胞の活性化指標として用いられるCD34およびCD200の発現レベルがそれぞれ上昇していることを確認した。これらの結果から、作用部位のミノキシジル濃度を高めることで毛包幹細胞や毛乳頭細胞が活性化されたことにより、発毛が早まった可能性が示唆された。

ナノ粒子化で毛包へ効率的に送達、毛包幹細胞等の活性化で発毛効果を早める可能性

今回の研究成果により、ミノキシジルをナノ粒子化することで毛包への効率的な送達が可能となり、毛包幹細胞等を活性化させることで発毛効果を早める可能性があることが確認された。

大正製薬は「毛髪に関わるさまざまな課題を解決するため、「生えるを科学する大正製薬のヘアケア研究」のもと、毛髪科学に関わる研究活動を継続し、生活者のより豊かな暮らしの実現に貢献していく」と、述べている。

 

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