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【日本臨床疫学会】RWD研究の加速が必要-産官学連携し基盤整備を

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2017年10月04日 AM10:30


■日本臨床疫学会が初の学術大会

2016年設立された日本臨床疫学会の第1回年次学術大会が9月30日、10月1日に都内で開催された。シンポジウムでは、実臨床データベースを活用した医薬品の市販後安全性評価に向け、2018年にはGPSP省令改正や「」の本格運用が始まる中、人材や医療情報データベースなどインフラ整備が課題となっている。シンポジストからは、国内でリアルワールドデータ()やビッグデータを用いた研究を加速させていくために、産官学が連携した基盤整備の重要性が指摘された。

医薬品医療機器総合機構()では、2018年から複数医療機関のデータを統合解析するための医療情報データベースネットワーク「MID-NET」の本格運用を開始する予定となっており、現在10拠点23病院が協力し、約400万人規模のデータを集積している。

PMDA医療情報活用推進室の宇山佳明氏は、MID-NETで対照群と比較した観察研究も行っていることを説明。低カリウム血症のブルーレターが発出された骨粗鬆症治療薬「」について、ブルーレター後にリスク最小化策を実施した患者を対象に、MID-NETで副作用発現の減少効果をゾレドロン酸と比較する研究を実施した結果、副作用を管理できることが確かめられたという。データベースの整備も進めており、「病院情報システムとの情報の一致率が約56%だったのが、品質管理後は100%を達成するなど改善している」と語った。

今後の普及に向けては、「RWDやビッグデータは宝にもなるし、ゴミにもなる。何ができるかを考え、そこで生まれたエビデンスが価値となって、社会に成功事例を出していくことで、国民の理解や合意形成が生まれる。そのためには産官学が連携しないといけない」と述べた。

日本製薬工業協会データサイエンス部の小宮山靖氏(ファイザー)は、「日本にドラッグラグがあった頃は有効性・安全性評価の最前線に立たずに済んだが、現在は国際共同開発に参加し、日本が世界に先駆けて承認を取得する時代に入り、世界の育薬に貢献しなければならなくなっている」と、市販後でエビデンスを創出していく重要性が増しているとした。

ただ、“世界初医薬品”のように、市販後に安全性情報を集積する意義が高まっているのに対し、「日本では市販後の安全性評価を行う環境が整備されていない」との課題を挙げ、2018年4月のGPSP省令改定をポイントに挙げた。

GPSP省令では、対照群を置いた使用成績比較調査が可能になる見込みで、「比較の概念が欠如していたGPSP省令に比較調査が盛られたことは一定の評価ができるし、(使用成績調査に)医療情報データベースを使えることを明示した意義もあると思う」と期待感を示した。

また、日本の臨床研究や市販後に関する規制については、「ローカル色が強すぎる」と国際的な規制の方向性との乖離を問題点に挙げた。世界各国と協力して有効性・安全性エビデンスを積み上げ、グローバルの育薬に貢献するためには、「産官学連携が大事」とそのあり方を含め議論すべきとした。

 

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