同剤は、5月に再生医療等製品として条件・期限付き承認されたが、中外は16日、歩行不能な患者で致死的な経過を辿った急性肝不全2例を報告し、国内で実施中の歩行不能な患者を対象とした臨床試験も投与を中断すると決定した。
この日の総会で厚労省は、現時点で安全性の評価は明らかでないため、新たな安全性情報についてさらなる情報を収集した上で、医療保険上の取り扱いについて議論するよう提案し、了承された。
委員からは、同剤の安全性に対する強い懸念が示された。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「承認した制度は有効性は推定であるものの、安全性は認められる場合に早期に条件付きで承認を与えるものだ。大前提である安全性が揺らいでいることから、保険適用にかかる議論はできなくなったと理解している」との認識を示した。
その上で「承認された使用方法や対象患者の設定なども含め薬事で専門的に再検討し、厚労省として情報収集を整理した上で丁寧で慎重な検討が必要」と主張した。
森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も「(条件・期限付き承認の)前提が崩れたのか、崩れていないのか薬事の点で確認した上で改めて医療保険上の取り扱いについて判断すべき」と慎重な対応を求めた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「急性肝不全による死亡ということで、この薬剤との因果関係が必ずしも否定されていないと受け止めている。患者さんが一刻も早い保険適用を待ち望んでいることは認識しているが、保険給付する以上は最低限、安全性の確認は不可欠」との考えを示した。
中外は、今回の公表について「承認されている歩行可能な患者における同剤のベネフィット・リスクプロファイルに変更はない」と説明しており、厚労省医薬局医療機器審査管理課の高江慎一課長も「安全性が確認されたというところは揺るがないものと思っている」と語った。
一方で、「再生医療等製品は市販後に審査時、治験時に予期しなかったものが出てくるので、安全性情報を集めた上で必要な対策を取らないといけない」と述べ、今後企業と協議しながら対応を検討し、中医協に報告する考えを明らかにした。