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血液の凝固能亢進、高感度で検出-東京医歯大

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2016年06月13日 PM02:00

心原性脳梗塞リスク評価で重要も評価が困難だった凝固能亢進

東京医科歯科大学は6月9日、ソニー株式会社の「」を用いて、血液の誘電率変化を測定し、その微分波形から新たな指標を算出することで、血液の微少な凝固能亢進を高感度に検出できることを明らかにした。


画像はリリースより

この研究は、同大学大学院保健衛生学研究科・生命機能情報解析学分野の笹野哲郎准教授らと、同医歯学総合研究科心臓調律制御学の平尾見三教授の研究グループ、同先端血液検査学、循環制御内科学、難治疾患研究所生体情報薬理学との共同研究によるもの。研究成果は、国際科学誌「PLOS ONE」オンライン版に6月8日付けで掲載された。

心原性脳梗塞の発症予測評価としては、心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳梗塞の既往を点数化した「」があり、心房細動にともなう心原性脳梗塞のリスク評価に使用されていた。CHADS2スコアでは、合併症の有無を点数化するだけで簡単に計算できるが、一方で、脳梗塞のリスク評価指標としては限界があることも知られている。

血液凝固能には個人差があり、凝固能が高いほど血栓が生じやすくなるため、心原性脳梗塞の危険が高くなるとされている。従来の検査では、血液凝固能の低下は調べられるが、凝固能の亢進を感度よく評価することは困難だった。このため、血液凝固能の亢進は、心原性脳梗塞のリスク評価の上で重要であるにもかかわらず、これまであまり調べられてこなかった。

CHADS2スコア0点でも凝固能に大きなばらつき

研究グループは、誘電コアグロメーターを用いて、全血の凝固能の評価を行った。血液が凝固する過程では赤血球が凝集・変形し、血液の誘電率が徐々に変化。10MHz帯の誘電率変化から微分波形を算出し、新しい凝固能の指標であるEAT(end of acceleration time)を確立したとしている。

EATが短いと赤血球はより早く凝集することになり、凝固能が高いといえる。EATは高い再現性をもって計測可能で、血液に凝固反応を促進させるための試薬をごく微量加えると、EATは試薬の濃度依存的に短縮し、凝固を低下させるための試薬を少量加えると濃度依存的に延長。つまり、EATは凝固能の微少な亢進と低下をどちらも評価できる指標といえる。凝固能が低下した検体では、EATは従来の凝固能検査であるPTやaPTTなどと高い相関を示したが、凝固能が亢進した検体では、従来検査の感度が低いため、EATとの相関は得られなかった。

続いて、心血管疾患患者をCHADS2スコアによって0点、1点、2点以上の3群に分け、誘電コアグロメーターおよび従来の検査法による評価を行った。CHADS2スコアの高い群ではEATが有意に短縮しており、凝固能が亢進していることが明らになった。この違いも、PTなどの従来の検査法では検出できなかった。CHADS2スコアでは脳梗塞リスクが低いとされる0点の群でも凝固能には大きなばらつきがあり、一部の症例はCHADS2スコアが高い群と同じ程度の値を示した。凝固能を抑える薬剤であるワルファリンを内服している症例ではEATは延長し、薬物による治療効果の判定も可能と考えられる。

今回確立した新しい検査指標により、血液凝固能を正確に評価した上で治療を開始することで、心原性脳梗塞の発症をより効果的に予防できることが期待される。さらに、心原性脳梗塞の予防には抗凝固薬が用いられるが、これらの薬剤の効果判定にも今回の検査が使用できる可能性があり、今後、心原性脳梗塞に対するより効果的な治療に役立てられる可能性があると研究グループは述べている。

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