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SGLT2阻害薬、糖尿病関連腎臓病の進行を抑える新たな仕組みを発見-岡山大ほか

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2024年04月01日 AM09:30

糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬、明らかでない腎臓保護メカニズム解明へ

岡山大学は3月27日、SGLT2阻害薬カナグリフロジンについて、糖尿病関連腎臓病の進行を抑制する新しい作用メカニズムを発見したと発表した。この研究は、同大大学病院腎臓・・内分泌内科の中司敦子講師、和田淳教授、NPO法人日本腎臓病協会Kidney Research Initiative-Japan(KRI-J)、田辺三菱製薬株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Diabetes」に掲載されている。

糖尿病患者の増加とともに、合併症の一つである糖尿病関連腎臓病が増加し、これによる腎不全が長らく透析導入原疾患の第1位を占めている。近年では、治療薬や診療技術の進歩により糖尿病関連腎臓病による透析導入数は減少に転じてきたが、今もなお、多くの患者が透析を必要とする腎不全に至っていることに変わりはない。一方で、早期に診断して生活習慣の見直しや有効な治療薬の使用により、進行を抑制できることがわかってきた。

SGLT2阻害薬は、約10年前から糖尿病の治療薬として用いられている。近年では、血糖改善以外に、腎臓病の進行や心不全の悪化を抑える働きについて、基礎・臨床の双方から研究成果が集まってきており、その有効性が知られている。しかし、「どのように腎臓を保護しているのか?」については、腎臓の血液の流れを是正したり、・蛋白尿を減らしたり、血糖値を良くしたりするなど、明らかにされているメカニズム以外に、まだ知られていないメカニズムも存在すると言われている。そのメカニズムを解明することで、今まで以上に、必要な患者に適切に使用できるのではないかと考えられる。

研究グループは今回、SGLT2阻害薬の一つであるカナグリフロジンを使用して、腎臓の近位尿細管細胞の保護作用、間質線維化の抑制作用の新しいメカニズムを明らかにすることを目的として研究を進めた。

近位尿細管細胞の線維化を抑制、GRP78発現量や局在変化が関連

研究の結果、カナグリフロジンの近位尿細管細胞保護作用に、細胞内のGRP78の発現量や局在変化が関係していることがわかった。糖尿病では近位尿細管細胞において、GRP78とSGLT2、また、GRP78とIntegrinβ1が一緒に細胞表面に移動し、糖やナトリウムの再吸収を亢進させたり、線維化にかかわる経路が活性化されたりする。カナグリフロジンはこれらの分子の細胞表面への移動を抑制したり、発現量を調節したりすることが見出された。

尿中へのGRP78分泌抑制も判明、炎症拡大抑制の可能性も

また、糖尿病では近位尿細管細胞から尿中へのGRP78分泌が増加することも判明。分泌されたGRP78は、周辺の尿細管細胞に作用して、炎症を引き起こし、細胞の障害を拡大すると考えられた。カナグリフロジンは、GRP78の尿中への分泌を抑制し、炎症の拡大を抑制する可能性が示された。

SERCA機能に作用し、細胞内のCa2+濃度の恒常性維持に関与していた

正常な状態でも糸球体で濾過された原尿には糖が排泄されるが、ほぼ全てが糸球体の下流にある尿細管で再吸収されるため、通常尿中に糖は排泄されない。SGLT2阻害薬は近位尿細管細胞の糖の取り込み口であるSGLT2を阻害して、糖吸収を抑制する薬剤だ。そのため、近位尿細管細胞内の糖濃度が低下し、これによりGRP78が増加すると考えられた。特に、小胞体に存在するGRP78は小胞体の働きに大切だ。また、カナグリフロジンは細胞内のCa2+をその貯蔵庫である小胞体に戻すポンプであるSERCAの機能に作用し、細胞内のCa2+濃度の恒常性維持に関わることがわった。これらのメカニズムは、糖尿病のない場合でも尿細管細胞の保護につながると考えられる。

、血糖改善作用とは別に尿細管細胞保護の可能性

SGLT2阻害薬は、大規模臨床試験で糖尿病関連腎臓病への有効性が示されている薬剤だ。今回明らかにしたカナグリフロジンの新しい作用メカニズムは、血糖改善作用とは別に尿細管細胞を保護する可能性を示唆する。必要な患者に、適切な時期から適切にSGLT2阻害薬が使用され、多くの患者の腎症の進行が抑制されることを期待する、と研究グループは述べている。

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