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原発性IgA腎症、治療薬「アトラセンタン」をFDAが迅速承認-ノバルティス

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2025年04月24日 AM09:00

1日1回経口、RAS阻害薬を含む支持療法に上乗せ可能

ノバルティス ファーマ株式会社は4月22日、スイスのノバルティスが4月3日に、進行リスクの高い成人原発性IgA腎症患者のタンパク尿減少を適応としてAtrasentan(製品名:)が米国食品医薬品局(FDA)よる迅速承認を取得したことを発表した。

IgA腎症は進行性のまれな腎疾患で、免疫系が腎臓を攻撃し、しばしば糸球体の炎症とタンパク尿を引き起こす。米国では年間で100万人あたり約13人が診断され、最も一般的な自己免疫性腎疾患の一つであるが、疾患経過は患者ごとに異なる。持続性タンパク尿を有する患者の最大50%が診断から10~20年以内に腎不全へと進行して、維持透析や腎移植を必要とすることが多い一方、治療への反応に個人差がある。

同製剤は、強力かつ選択的エンドセリンA(ETA)受容体拮抗薬。1日1回投与の非ステロイド性経口薬で、SGLT2ナトリウム-グルコース共輸送体阻害薬併用の有無を問わず、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬を含む支持療法に上乗せすることが可能だ。

プラセボ対照P3試験、ベースラインの総タンパク尿が1g/日以上の患者が対象

今回の迅速承認は、36週時点でプラセボと比較したタンパク尿の減少を評価する、第3相ALIGN試験の事前に規定された中間解析の結果に基づいている。同試験は、腎機能低下が進行するリスクのあるIgA腎症患者を対象として、atrasentanの有効性および安全性をプラセボと比較する、国際共同、無作為化、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照の第3相試験。RAS阻害薬による至適治療にもかかわらず、ベースラインの総タンパク尿が1g/日以上で、生検でIgA腎症と確定診断された患者340人が、約132週間にわたりatrasentan(0.75mg)またはプラセボを1日1回経口投与するコホートに無作為に割り付けられた。

患者は、支持療法として最大耐量かつ安定用量のRAS阻害薬の投与を継続して受ける (RAS阻害薬に対する忍容性が良好でない場合を除く)。また、SGLT2阻害薬を12週間以上に投与されている患者64人も追加コホートとして登録されている。中間解析の主要有効性評価項目は、24時間畜尿によるUPCRで評価した腎不全のマーカーであるタンパク尿のベースラインから36週時点までの変化だった。副次的および探索的目的には、eGFRで評価するベースラインから136週時点までの腎機能の変化、ならびに安全性および忍容性の評価が含まれている。

プラセボと比べ36.1%のタンパク尿減少、6週目で認められ36週時点まで持続

中間解析の結果、RAS阻害薬との併用でatrasentanを投与された患者は、プラセボと比較して36.1%(P<0.0001)の臨床的かつ統計学的に有意なタンパク尿減少を達成した。その結果は6週目で認められ、36週時点まで持続した。AtrasentanのUPCRに対する効果は、試験の主要コホートにおいて、年齢、性別、人種、ベースラインの疾患特性(eGFRやタンパク尿のレベル)を含む部分集団間で一貫していた。同様の治療効果は、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬を併用投与した追加のコホートでも認められた(プラセボと比較してUPCRの37.4%減少)。

過去の報告と同様の良好な安全性プロファイル

安全性については、過去に報告されたatrasentanのデータと同様の良好なプロファイルを有することが示された。Atrasentan投与群の患者の2%以上かつプラセボ群よりも高頻度に報告された有害事象は、末梢性浮腫、貧血、肝トランスアミナーゼ値の上昇だった。

エンドセリン受容体拮抗薬の中にはアミノトランスフェラーゼの増加、肝毒性、肝不全を引き起こすものがあるため、医師はatrasentanの投与開始前および臨床的に必要な場合は投与期間中に肝酵素検査を実施する必要がある。また、Atrasentanは、重篤な先天異常を引き起こす可能性がある。Atrasentanはリスク評価・緩和戦略(REMS)プログラムに該当しない。

今後得られる予定のeGFRデータをもって通常承認を目指す

AtrasentanがIgA腎症患者の腎機能低下を遅らせるかどうかは確立されていない。今後のIgA腎症に対する継続的な承認は、136週時点での推算糸球体濾過量()の低下を指標としてatrasentanが疾病の進行を遅らせるかどうかを評価する、現在進行中の第III相ALIGN試験における臨床的有益性の検証が条件となる可能性がある。eGFRのデータは2026年に得られる見込みで、FDAの通常承認の裏付けとなる予定。

Stanford University Medical CenterのGlomerular Disease Centerの責任者兼同大学医学部腎臓内科教授で、ALIGN試験の治験責任医師兼治験運営委員でもあるRichard Lafayette, M.D., F.A.C.P.は次のように述べている。「今回の承認はIgA腎症患者にとって重要なマイルストーンとなるもので、REMSを必要とせず、既存の治療計画にシームレスに組み込める新たな選択肢をもたらした。Atrasentanは、IgA腎症の主要なリスク因子であるタンパク尿を効果的に減少させる選択的ETA受容体拮抗薬である。早期かつ決定的な治療は、腎不全に進行することが多い患者の予後を改善するのに極めて重要だ」。

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