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全身型重症筋無力症の治療に新たな選択肢

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2025年11月27日 PM12:00

成人および12歳以上の小児という幅広い患者が対象

ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、日本国内に約2万3,000人の患者がいると推定される1)全身型重症筋無力症の新たな治療選択肢として、「アイマービー®」(一般名:ニポカリマブ)を発売したことを踏まえ、2025年11月12日に記者説明会を開催した。
ニポカリマブは今年9月に「全身型重症筋無力症(ステロイド剤またはステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)」を効能・効果として、製造販売承認を取得し、11月に薬価収載された。

記者説明会で講演した長根百合子氏(公益社団法人花巻共立会総合花巻病院脳神経内科部長)は、「全身型重症筋無力症領域では、患者のQOL改善を考慮し治療目標の早期達成が推奨されており、この早期達成には早期即効性治療戦略が有効。これにより、症状の改善レベルや治療目標の達成率は改善しつつある。一方で難治例が2割ほど存在する2)ため、新薬開発のニーズがある」と指摘。こうした状況で分子標的薬の開発が進んでおり、すでに補体阻害薬とFcRn阻害薬が臨床現場に登場している。


長根百合子氏(ジョンソン・エンド・ジョンソン提供)

今回承認を受けたニポカリマブはFcRn阻害薬の一種であり、長根氏はその有効性について国際共同第Ⅲ相試験(M281-011試験)の結果を踏まえ、「プラセボ群に対し、ニポカリマブ群では重症度スコアの有意な改善が示された。また、成人だけではなく青年期(12歳以上18歳未満)の全身型重症筋無力症に対しても臨床試験が行われ、FcRn阻害薬としては初めて青年期の全身型重症筋無力症にも承認を獲得している」と説明した。

分子標的薬の開発が進み患者の治療選択肢が増えたことを受けて長根氏は、「患者さんの状況に応じた個別化治療が今後進展する可能性が示唆される。今回登場したニポカリマブによってより安定した症状管理が行われることが期待される」と締めくくった。

患者自身が薬に関する正しい知識を持つことの重要性

渡部寿賀子氏(一般社団法人全国筋無力症友の会会員)は、患者の立場から講演した。渡部氏は2003年に全身型重症筋無力症を発症、さらに2005年には呼吸筋の麻痺により自力で呼吸ができなくなるクリーゼを経験。

自身の症状や治療を振り返った渡部氏は「副作用に関する話を中途半端に聞いてしまい、薬に対する警戒心がかなり強くなってしまった。今になって、薬に対する正しい知識を得て、医師ときちんとコミュニケーションがとれていたら、クリーゼまでは至らなかったのではないかと思うことがある。医師をはじめとする専門家、製薬企業の方、患者会などが連携するとともに、患者自身も自分の病気や治療について正しく知ることが大切だと思う」と話した。(QLifePro編集部)

1)Murai H, et al. Clinical features and status of adult myasthenia gravis in Japan. Clin Expo Neuroimmunol. 2014; 5: 84-91.
2)Suzuki S, et al. Clin Expo Neuroimmunol 2022; DOI: 10. 1111/ cen3. 12731.

 

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