厚生労働省は、1日の厚生科学審議会と薬事・食品衛生審議会の合同会議で積極的勧奨の再開に向けて、「ワクチンに関する情報提供」「安全性・有効性に関するエビデンス」「症状に苦しむ患者の支援」の取り組みを提示した。
この日の会議で「再開を妨げる要素はない」との方向性が示され、12日には今後も取り組みを継続することを条件に「積極的勧奨の差し控えを終了する」と結論づけた。わずか2回の会議で積極的勧奨の再開が決まった。
日本産科婦人科学会は12日付で、「尽力した関係者の皆様に深謝する」と歓迎する声明を公表。「今後はエビデンスの整理と共に、接種後に生じた症状に苦しむ方々への支援策も含め、これらの問題を解決しながら、HPVワクチン接種体制をさらに充実させ、国民のワクチンへの理解が得られるように関係者一同、努力していく」とコメントした。
それに対し、HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は同日付で抗議声明を発表した。合同会議の結論について「深刻な被害実態と科学的知見を無視した極めて不当な結論」と厳しく批判。ワクチンが子宮頸癌の生涯罹患率を減少させる効果は実証されていないなどと記した上で、子宮頸癌予防は「副反応がなく、予防効果が科学的に実証されている検診を重視すべき」と主張した。
さらに積極的勧奨を再開する場合は「被害者救済と接種しようとする人への正確な情報提供が不可欠。改めて、治療法の研究と真の医療体制の整備、副反応の発生状況を把握するために被接種者に対する追跡調査を実施するよう求める」と訴えた。
専門家からもワクチンの安全性評価の充実を求める声が上がっている。12日の合同会議で多屋馨子委員(国立感染症研究所感染症疫学センター予防接種総括研究官)は、「3カ月に1回の頻度で評価しているが、再開後は頻度を多くして間隔を短くすべき」と提案。また、国内で使用可能なワクチンの接種回数は3回だが、諸外国では若年女性の接種回数は2回にしているとして、「回数が少なくなることは安全性の改善にもつながる」との考えを示し、若い女性が安心して接種できる体制の構築を求めた。