仕事のパフォーマンスへの環境影響、「立場」による検討はなかった
富山大学は5月26日、地方公務員3,325人を対象に、仕事のパフォーマンスの関連要因を分析した結果を発表した。この研究は、同大学術研究部医学系疫学健康政策学講座の立瀬剛志助教、関根道和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational and Environmental Medicine」に掲載されている。

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高い仕事のパフォーマンスは、個人レベルでは、本人の仕事への自信や達成感につながるとともに、職場における地位向上や給与水準に影響を与える。また、社会レベルでは、組織の成功や社会全体の発展にとって重要である。従来から、仕事のパフォーマンスは、働く人の健康状態の影響を受けるとともに、働く環境の影響を受けることが知られ、その要因は多岐にわたることが知られている。しかし、従来の研究では、一般職や管理職といった職場での立場に注目した検討は行われてきていなかった。
地方公務員3,325人対象、仕事のパフォーマンスに関連の要因を「職位」ごとに調査
そこで、研究グループは、仕事のパフォーマンスに関連する要因を職位ごとに明らかにすることを目的として研究を行った。対象は、日本の地方公務員3,325人。2019年に質問票を用いて実施した。仕事のパフォーマンスは、世界保健機関(WHO)が開発した「健康と仕事のパフォーマンス質問票」(HPQ)の日本語版を使用して評価した。この質問票は過去4週間の自身の仕事のパフォーマンスを10段階で評価するものである。職位は、3段階(一般職、中間管理職、管理職)で評価した。仕事のパフォーマンスに関連する可能性のある要因として、仕事の裁量度、仕事の要求度、仕事の支援度、職場の公平性、職場の一体感、働きがい、健康状態(抑うつ状態の有無)を評価。職位ごとに、仕事のパフォーマンスの関連要因についてロジスティック回帰分析を用いて評価した。
共通要因は、健康状態が良好・働きがいのある職場
研究の結果、どの職位も、自身の健康状態が良好であること(抑うつ状態にないこと)、および、働きがいがあることが、高い仕事のパフォーマンスと関連していた。
一般職は裁量度/中間管理職は要求度/管理職は職場の公平性が重要
また、一般職では、仕事の裁量度が高く仕事の支援度が低い人は、仕事のパフォーマンスが高いという結果であった。中間管理職では、仕事の要求度の高い人は仕事のパフォーマンスが高いという結果であった。管理職では、職場の公平性が高いほど仕事のパフォーマンスが高いという結果だった。
職位の特性に応じた取り組み、パフォーマンス向上や組織全体の活性化に期待
今回の研究では、高い仕事のパフォーマンスには、労働者の健康状態が良好であることや働きがいのある職場であることという共通要因と、職位ごとに異なる仕事のパフォーマンスの関連要因があることが明らかとなった。この結果は、今後の仕事のパフォーマンスや労働環境改善の取り組みにおいて、重要な示唆を与えるものだとしている。組織としては、労働者の健康状態の維持・増進への取り組みや、働きがいのある職場づくりに取り組むことが重要であるといえる。また、職位ごとに異なる関連要因があることについては、一般職には個人の裁量度(誰とどのように仕事を進めるか、新しいことを学ぶ機会)を高めるよう取り組むこと、中間管理職には適切な仕事量となるようコントロールすること、管理職には職場の公平性を高めるよう取り組むことが、職位の特性に応じた仕事のパフォーマンス向上につながること、ひいては組織全体の活性化につながることが期待される。
今後は、地方自治体等と連携した職場環境改善の提案や、地域・職域での講演活動を通じて、研究成果の現場での実践と普及に努める。これらの活動により、より多くの働く人々のウェルビーイング向上と組織の活性化を目指す、と研究グループは述べている。
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