医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > CMCD患者の病態解明に有用、STAT1-GOF変異導入マウスを樹立-広島大ほか

CMCD患者の病態解明に有用、STAT1-GOF変異導入マウスを樹立-広島大ほか

読了時間:約 3分8秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年02月06日 AM11:30

半数以上のCMCD患者、STAT1遺伝子の機能が過剰になるGOF変異が原因

広島大学は2月5日、STAT1-GOF変異(R274Q変異)を導入したノックインマウス(GOF-Stat1R274Qマウス)を樹立し、(CMCD)患者の病態解明に有用であることを示したと発表した。この研究は、同大学大学院医系科学研究科小児科学の小林正夫名誉教授、岡田賢講師、玉浦萌大学院生ら、理化学研究所生命医科学研究センターの佐藤尚子氏、大野博司氏、古関明彦氏ら、かずさDNA研究所の中山学氏、小原收氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより

CMCDは、免疫異常により、皮膚や爪、口腔などの粘膜に、真菌のひとつであるCandida albicans(C. albicans)が繰り返し感染し、健康な人と比べて治りにくくなる先天性疾患。CMCD患者の半数以上で、STAT1遺伝子の機能が過剰になる遺伝子の変異(GOF変異)が原因となることが知られている。

STAT1は、(IFN)-α/β、-γのシグナル伝達に必須の転写因子で、病原体に対する感染防御に重要な分子だ。STAT1-GOF変異は2011年に初めて同定され、現在までに世界で300例以上の患者が見つかっている。近年の研究で、CMCD患者はC. albicans以外の病原体にも容易に感染し、自己免疫性疾患を合併すること、また一部の重症例の予後が不良であることがわかってきた。唯一の根治的な治療法である造血幹細胞移植の治療成績は決して良好ではなく、分子標的薬のJAK1/2阻害薬が有効という報告もあるが、長期的な治療効果や副作用の評価が課題だ。そのため、重症なCMCD患者に対して、その病態に基づいた、より安全で効果的な治療法の開発が求められている。

CMCD患者は、IFN-γなどの刺激によってSTAT1の過剰なリン酸化を示す。また、炎症性サイトカインであるインターロイキン17(IL-17)は、C. albicansへの感染防御に重要な役割を果たすが、STAT1-GOF変異を持つ患者ではこのIL-17、およびIL-17を産生するTh17細胞が減少しており、C. albicansに容易に感染する。一方で、Th17細胞が減少する詳細なメカニズムは不明だ。

STAT1-GOF変異を有する患者と同様の特徴を示す

研究グループは今回、STAT1-GOF変異を有する患者の病態を解明するために、今までにCMCD患者で報告されているSTAT1-GOF変異のひとつであるR274Q変異を導入したノックインマウス(GOF-Stat1R274Qマウス)を作製。このマウスを用いて解析を行った。

まず、CMCD患者におけるTh17細胞の減少に着目し、Th17細胞が豊富に存在しているマウス小腸粘膜固有層リンパ球(SI-LPL)を用いて解析。GOF-Stat1R274Qマウス由来のSI-LPLのCD4陽性T細胞は、野生型マウスと比べて、IFN-γ刺激によってSTAT1 のリン酸化が亢進していた。また、GOF-Stat1R274Qマウスでは、SI-LPLにおけるTh17細胞減少およびIL17産生低下が認められた。これはTh17細胞の分化に必須な転写因子RORγtの発現低下が原因だと考えられた。これらの結果から、GOF-Stat1R274Qマウスは、STAT1-GOF変異を持つ患者と同様の特徴を持つと考えられた。

C. albicansの排除障害にTh17分化障害が重要な役割

次に、C. albicansへの易感染性を評価するために、C. albicansをマウスに投与。感染3週後のGOF-Stat1R274Qマウスでは、野生型マウスと比較して、SI-LPL由来のCD4陽性T細胞でのIL-17産生低下およびRORγt発現低下を認めた。また、GOF-Stat1R274Qマウスの小腸粘膜上皮にC. albicansが検出され、糞便中におけるC. albicansの遺伝子発現の増加が認められた。以上の結果より、C. albicans感染後においても、GOF-Stat1R274Qマウスでは Th17細胞の分化が障害されており、IL-17 産生が低下することで、C. albicansの排除が障害されると考えられた。さらに、C. albicans感染後のGOF-Stat1R274Qマウスでは、RORγt を抑制する転写因子T-betの発現が増加しており、Th17細胞の分化障害に関与していることが示唆された。

今回の研究結果より、GOF-Stat1R274Qマウスは、STAT1のリン酸化亢進、Th17細胞減少およびIL17産生低下、C. albicansの排除障害を認め、患者と同様の特徴を示した。さらに、これらのマウスでのC. albicansの排除障害に、Th17分化障害が重要な役割を果たすことが明らかになった。この遺伝子変異導入マウスを用いることで、CMCD患者のさらなる病態解明が進むとともに、治療法の開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 先天性難聴の頻度や原因、15万人の出生児で大規模疫学調査-信州大
  • 骨再生作用/抗炎症効果を兼ね備えた新たな生体活性ガラスを開発-東北大
  • 脳卒中患者の物体把持動作に「感覚フィードバック」が重要と判明-畿央大ほか
  • 肝線維化の治療薬候補を同定、iPS細胞から誘導の肝星細胞で-東大ほか
  • 「ストレス造血時」における造血幹細胞の代謝調節を解明-東北大ほか