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オートファジーがミトコンドリアの一部分を直接引きちぎりながら分解-新潟大ら

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2016年12月05日 AM11:45

経時的にミトコンドリアの分解過程を追跡する実験系を樹立

新潟大学は11月30日、オートファジーが大きなミトコンドリアの一部分を直接引きちぎりながら分解していることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科機能制御学分野の山下俊一助教、神吉智丈教授らが、九州大学大学院医学研究院の三原勝芳名誉教授と大寺秀典助教、京都大学大学院農学研究科の阪井康能教授、大阪大学大学院医学系研究科の吉森保教授と浜崎万穂准教授らと共同で行ったもの。研究成果は、「Journal of Cell Biology」に同日付けで掲載されている。


画像はリリースより

ミトコンドリアは、細胞が必要とするエネルギーの大半を産生する細胞内小器官で、生命活動を行う上で非常に重要な役割を果たしている。細胞内にはさまざまな大きさのミトコンドリアがあり、ミトコンドリアが分裂すれば小さく、融合すれば大きくなる。オートファジーがミトコンドリアを分解する場合、これまでは、分裂により生じた小さなミトコンドリアが分解されていると考えられていた。しかし、このミトコンドリア分解過程を経時的に観察した報告はほとんどなかった。

共同研究グループは、ミトコンドリアがどのようにしてオートファジーによって分解されているのかを知るために、経時的にミトコンドリアの分解過程を追跡する実験系を樹立し解析した。従来のモデルでは、一旦大きなミトコンドリアが小さく分裂してから、分解へ向かうと考えられていたが、ミトコンドリア分裂に必須な因子「」()を欠損した細胞でもミトコンドリア分解が見られることなどから、多くの矛盾が生じた。

パーキンソン病などの神経変性疾患の病態解明に期待

そこで、ミトコンドリアオートファジーの過程を生きた細胞の中で追跡し、何が起きているのかを詳細に解析。その結果、ミトコンドリアオートファジーの過程では、大きなミトコンドリアの一部分が隔離膜によってちぎり取られ、分解されることを世界で初めて明らかにした。これにより、従来のモデルとは異なる、新しいミトコンドリアオートファジーのモデルを提唱した。

さらにこの現象は、ミトコンドリアの分裂必須因子には依存せず、隔離膜の形成因子に依存することから、隔離膜が閉じる力がミトコンドリアの分裂に寄与している可能性を示すことができた。このことは、オートファジーがオートファゴソームより、大きな物体を分解するときの一般化できる新しいモデルとなる可能性があるとしている。

近年、ミトコンドリアオートファジーが、パーキンソン病などの神経変性疾患と関わりがあることが明らかになってきた。共同研究グループは、こうした疾患の病態解明にも結びつくよう、今後は分子レベルでの解明を進めていくとしている。

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