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順天堂大 聴毛配列異常で高音が低く誤認識される新聴覚障害を発見

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2014年06月19日 PM03:30

2オクターブも低く誤認識される聴覚障害の存在を確認

順天堂大学医学部 耳鼻咽喉科学講座の神谷和作講師ら研究チームは6月13日、聴毛配列の異常によって、高周波の音が2オクターブも低い音に誤認識される新しいタイプの聴覚障害を発見したと発表した。この成果は、仏・パスツール研究所などとの共同研究によるもので、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」オンライン版に6月11日付で掲載されている。


画像はプレスリリースより

Nherf1が欠損すると高音域聴毛配列に異常

内耳の蝸牛では、有毛細胞がらせん状に並んでおり、下側で高音を、上側で低音を認識していることが知られている。今回、研究チームはまず、タンパク質Nherf1の蝸牛有毛細胞の聴毛における重要性を発見。Nherf1遺伝子欠損マウスでは、高音域の聴毛配列に重大な異常が生じることを見出した。

このNherf1欠損マウスで聴覚機能を詳しく調べたところ、高音域の外有毛細胞はほぼ機能を失っていたという。しかし、高音域を一般的聴力測定であるABRで測定すると、軽度な聴力低下という結果となった。そこでこの原因を調べるべく、特定の音階を正しく認識しているか、一つの音に対し様々な周波数のマスキング音を重ね、内耳の電気的活動の変化に関する解析を実施した。

従来の聴力検査では判別不可

すると聴毛配列に異常のあるNherf1欠損マウスは、40キロヘルツの高音が同じ音でマスキングされず、代わりに10キロヘルツ付近の低い音域で強いマスキング効果が見られた。このことから、高音に対して著しく低い音域の聴毛が反応し、脳へ誤った信号を送っていると考えられ、騒音下での聞き取りが著しく障害される可能性が示唆されたという。

こうした激しい音階認識の異常を伴う聴覚障害は、従来の聴力検査のみでは判別できないことから、全く知られていなかった。これまで高音域の軽度な聴力低下と思われてきたヒト症例でも、このような聴覚障害で、実際より極めて低い音が聞こえたり、騒音下で著しく聞き取りが障害されたりしている可能性がある。

現在、主要な聴力検査法には、ABRとDP-OAEがあるが、ABR検査が正常レベルであるにもかかわらず、DP-OAE検査で大きな異常のある患者も時折存在していた。こうした症例のなかに、今回見出された新たな聴覚障害が存在すると考えられ、さらなる検査の必要性が強く示唆される。

研究チームでは現在、この成果をもとにABR、DP-OAE、マスキング音を用いた純音聴力検査を組み合わせた新たな臨床検査プロトコールを作製しており、近々開始する予定としている。(紫音 裕)

▼外部リンク
順天堂大学 プレスリリース
An unusually powerful mode of low-frequency sound interference due to defective hair bundles of the auditory outer hair cells

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