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名大 2つの蛋白質による神経線維形成促進を発見

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2013年10月22日 PM07:24

微小管の「脱」安定化機構を見出す

名古屋大学大学院理学研究科の上田(石原)奈津実助教と木下専教授を中心とする研究グループが、同医学系研究科宮田卓樹教授、東京大学大学院医学系研究科尾藤晴彦教授などの研究グループと実施した共同研究により、精神・神経疾患に関与する2つの蛋白質であるセプチンとHDAC6が協働するかたちで神経線維の形成を促進していることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究成果は、英科学誌「ature Communications」の現地時間10月11日発行分で発表されている。

脳の発達過程の神経線維の伸長には、線維の芯となる細胞骨格の主要なものである微小管の先端に、チューブリンという蛋白質が付加され、成長していくことが必要であることが分かっている。

このチューブリンがアセチル化などすると、微小管が安定化するが、一方で安定化しすぎると、分解によってリサイクルされるチューブリンの供給が減少し、微小管の成長も鈍化する。そのため成長には、微小管の安定化を適度に解除する脱アセチル化、脱安定化の機構も必要で、この安定化と不安定化の適度なバランスがコントロールされることが、神経線維における効率のよい伸長に欠かせない。しかし、このコントロールのしくみなど、詳細はよく分かっていなかった。

(画像はプレスリリースより)

HDAC6とセプチンが協働し脱アセチル化

研究グループは、神経細胞の主要な脱アセチル化酵素である微小管修飾酵素の蛋白質「HDAC6」がアセチル化チューブリンに効率よく結合し、脱アセチル化を促すには、もう1つの細胞骨格である「セプチン」が必要であることを実験により見出したという。

GTP結合蛋白質であるセプチンは、全身の細胞に存在するが、とくに発達後の脳・神経系に多い。ニューロンの中に散在する短いフィラメントで、目立ちにくい存在だが、欠乏させるとHDAC6を阻害したときと同様に、微小管が過剰にアセチル化し、安定化してしまうことで成長が鈍化、神経線維が伸びなくなることがマウス脳内と試験管内のいずれにおいても確認されたという。発達過程で微小管が不十分にしか成長できなくなったマウスでは、脳や脊髄で神経線維の形成不全が起きた。

この発見は、脳の回路形成への理解が深まるきっかけとなるだけでなく、セプチンとHDAC6の相互作用、およびその生理的意義が示されたことにより、この両者が関与する精神・神経疾患の謎を解明する糸口となると期待されている。(紫音 裕)

▼外部リンク

名古屋大学 プレスリリース
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/

Nature Communications 該当論文
http://www.nature.com/ncomms/2013/131011/

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