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SIADHマウスモデル作製、慢性低Na血症が記憶に影響することを明らかに-藤田医科大

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2022年12月26日 AM10:55

神経症状が認められる慢性低Na血症、主な原因であるSIADHのマウスモデル作製が課題

藤田医科大学は12月20日、慢性低Na血症における病態のさらなる解析に有用な、世界初と言える安定した慢性低Na血症を呈する抗利尿ホルモン不適切分泌症候群()マウスモデルの作製に成功したと発表した。この研究は、同大内分泌・代謝・糖尿病内科学の椙村益久教授、藤沢治樹講師、鈴木敦詞教授、医科学研究センターシステム医科学研究部門の宮川剛教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Endocrine Journal」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

従来、慢性の低Na血症は、脳が低Na血症に適応するため無症状であると考えられてきた。しかし近年、比較的軽度な慢性低Na血症患者において認知機能障害、歩行時のバランス障害などの神経症状が認められ、Quality of lifeの低下および生命予後が悪化することが報告されている。疾患の病態解明には、適切な動物モデルが不可欠であり、従来、低Na血症の主な原因であるSIADHのモデルとして、ラットが一般的に使用されている。研究グループはその慢性SIADHラットを用いて慢性低Na血症により失調性歩行を呈すること、記憶障害が生じることを報告した。現在、行動解析などさまざまなin vivo実験系はマウスを対象としたものが多く、さらにマウスにおいては遺伝子改変技術が広く使われ病態における個々の遺伝子の役割の解析が容易になってきている。しかし、基礎実験に有用である慢性低Na血症のマウスモデルの報告はほとんどない。

液体食投与とデスモプレシン酢酸塩水和物の持続皮下注により作製

8週齢の雄C57BL/6マウスに液体食投与とデスモプレシン酢酸塩水和物(dDAVP)の持続皮下注を行った。dDAVPの用量は0.03ng/h(dDAVP0.03+液体食群)、0.3ng/h(dDAVP0.3+液体食群)、0.5ng/h(dDAVP0.5+液体食群)とした。また、比較として、生理食塩水持続皮下注と固形食を投与した群(生食+固形食群)、生理食塩水持続皮下注と液体食投与群(生食+液体食群)、dDAVP0.5ng/h持続皮下注と固形食投与群(dDAVP0.5+固形食群)を作製した。また、dDAVP0.03+液体食群をコントロール群、dDAVP0.3+液体食群を低Na血症群として、恐怖条件付けテスト、T字型迷路による記憶の評価を行った。

血清Na値・血清尿酸値が有意に低下し記憶の低下も認める、慢性Na血症の補正により一部記憶が改善

dDAVP投与3週間後、6群間で体重の有意差を認めなかった。血清Na値は生食+液体食群(153.3±0.3mEq/L)と比較して、dDAVP0.03+液体食群(140.5±2.7mEq/L)では有意に低下し、dDAVP0.3+液体食群(123.7±2.4mEq/L)、dDAVP0.5+液体食群(122.2±0.5mEq/L)ではさらに低下していた。また、血清尿酸値は、生食+液体食群と比較して、dDAVP0.3+液体食群、dDAVP0.5+液体食群で有意に低下していた。さらに、尿浸透圧は、生食+液体食群と比較して、dDAVP0.3+液体食群、dDAVP0.5+液体食群で有意に上昇していた。行動解析では、低Na血症群で記憶の低下を認め、慢性Na血症を補正することにより、完全ではないものの、記憶の改善を認めた。

安定した慢性低Na血症を呈するSIADHマウスモデル、病態解析に有用

これらの結果から、作製されたマウスモデルは、体重の変化なく、血清尿酸値の低下、尿浸透圧上昇を伴って血清Na値が低下しており、ヒトのSIADHの病態を呈していると考えられた。このマウスモデルは、世界初と言える安定した慢性低Na血症を呈するSIADHマウスモデルであり、今後低Na血症、SIADHの病態解析に有用であると考えられるという。「本研究の結果、慢性低Na血症で記憶が低下すること、低Na血症を補正することにより、記憶が改善することが明らかとなり、実地臨床において低Na血症の診療、治療への貢献が期待できる」と、研究グループは述べている。

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