酸化ストレスによる膵臓β細胞損傷のメカニズム、詳細は未解明
大阪公立大学は5月26日、過食によるストレスによってβ細胞内で発現量が増加する遺伝子の一つを特定したと発表した。この研究は、同大大学院農学研究科の原田直樹准教授、山地亮一教授らと、大手前大学、東京大学、The Lundquist Institute at Harbor UCLA Medical Center、UCLAデヴィッド・ゲフィン医科大学院らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Biological Chemistry」に掲載されている。

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生活習慣病の一つである2型糖尿病の罹患者は世界中で増加しており、科学的に裏付けられた予防方法の確立が期待されている。そのためには、発症メカニズムの全容を明らかにすることが必要である。インスリンを分泌する膵臓β細胞は、食生活の乱れによって生じる酸化ストレスに弱く、細胞がダメージを受けることで、インスリンを分泌する機能が低下する。特に、日本人を含むアジア人は膵臓β細胞の機能が低いことが知られているが、そのメカニズムは未だ十分に明らかになっていない。
酸化ストレスでREDD2発現上昇、β細胞死促進・インスリン分泌低下・耐糖能異常へ
今回の研究では、膵臓β細胞がストレスを受けた際に発現が増加する遺伝子産物regulated in development and DNA damage response 2(REDD2/DDiT4L/Rtp801L)に着目。膵臓β細胞に酸化ストレスが加わると、REDD2は転写因子Nrf2やp53の標的遺伝子として発現量が増加し、β細胞の生存や機能に重要なシグナル伝達を阻害することが明らかになった。さらに、REDD2を全身または膵臓β細胞特異的に欠損させたマウスを用いた実験により、REDD2が膵臓β細胞の細胞死を促進し、インスリン分泌の低下および耐糖能の異常を引き起こすことを見出した。加えて、ヒト膵島のデータベースを用いた解析から、REDD2の発現量がインスリン分泌能や膵島量と負の相関を示すことが明らかになり、マウス実験との整合性が示された。
2型糖尿病の診断マーカーとしてREDD2に期待
今回の研究により、2型糖尿病を引き起こす原因遺伝子の一つを明らかにすることができた。今後は、2型糖尿病の診断マーカーとしてのREDD2の利用や、REDD2を標的とした薬剤や機能性食品の開発に繋がることが期待される、と研究グループは述べている。
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