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脳血管内治療時の術中・後再閉塞リスク、RNF213遺伝子多型保有で「高」-国循

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2022年07月14日 AM10:02

前方循環系LVOによる急性期脳梗塞、EVT治療・臨床転帰に対するRNF213 p.R4810K多型の影響を検証

国立循環器病研究センターは7月13日、日本人の約2.5%が保有するRNF213 p.R4810K多型が、頭蓋内動脈硬化性病変による脳主幹動脈閉塞に対して施行した血管内治療後の術中及び術後再閉塞率を有意に高めることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究センターの脳神経内科の吉本武史医師、猪原匡史部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Stroke: Vascular and Interventional Neurology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

東アジアのもやもや病の創始者多型として同定されたRNF213 p.R4810K多型は、日本人の約2.5%が保有する、比較的ありふれた遺伝子の個人差だ。近年、報告された大規模コホート研究では、日本人4万6,958人を対象に同多型を調べた結果、日本人の脳梗塞、特に頭蓋内動脈硬化性病変(ICAD)により引き起こされるアテローム血栓性脳梗塞の強力なリスク遺伝子と判明していた(全虚血性脳卒中のオッズ比1.91、アテローム血栓性脳梗塞3.58)。東アジア人における大規模観察研究では、血管内治療(EVT)が施行された脳主幹動脈閉塞症(LVO)の内、約15~25%がICADによるLVOであること、さらにICADと同多型が強く関連することが示されていたが、同多型がLVO後のEVT成績へどのように影響するかは明らかではなかった。

そこで今回の研究では、前方循環系LVOによる急性期脳梗塞における、EVTの治療および臨床転帰に対するRNF213 p.R4810K多型の影響を検証することとした。対象は2011年1月~2021年3月に、発症24時間以内の急性頭蓋内内頚動脈/中大脳動脈水平部(M1)閉塞に対するEVT施行例の内、 p.R4810K多型解析の同意取得例とした。多型保有の有無で2群(保有群、非保有群)に分類し、術中再閉塞、術後再閉塞、転帰良好率(脳梗塞発症90日後の日常生活自立度(修正ランキンスケールスコア0–2))を比較。 p.R4810K多型は、EVT後に遺伝子解析システム(GTS-7000; Shimadzu Corporation, Kyoto, Japan, or LightCycler 96; Roche, Basel, Switzerland)で測定し、ヘテロ型(G/A)を保有群、野生型(G/G)を非保有群とした。対象は277例(女性128例、年齢中央値76歳)。

保有群は非保有群に比べ、有意に若年でICAD関連LVOが多く、血管形成術を多く施行

その結果、保有群(n=10)は非保有群(n=267)と比して、有意に若年で(年齢中央値,67歳 vs. 76歳,P=0.01)、ICAD関連LVOが多く(70.0% vs. 8.6%,P<0.001)、血管形成術が多く施行された(70.0% vs. 12.0%,P<0.01)。転帰良好率は群間に有意差は無かった一方、術中再閉塞(70.0% vs. 5.6%,P<0.001)、術後再閉塞(60.0% vs. 0.4%,P<0.001)は保有群で有意に多く観察された。

ICAD関連LVOに限定して解析すると、非保有群(n=23)と比して、保有群(n=7)には術後再閉塞が有意に多く見られたが(71.4% vs. 4.3%,P<0.001)、術中再閉塞には差はなかった(71.4% vs. 34.8%,P=0.19)。

ICAD疑いでEVT施行の際、RNF213 p.R4810K多型の判定が有用な可能性

同研究により、RNF213 p.R4810K多型を保有すると、EVT時に血管形成術を多く施行する必要性が高いにもかかわらず、術中再閉塞及び術後再閉塞率が高まることが明らかになった。これは、同多型が頭蓋内血管の脆弱性に関わることを示しており、ICADが疑われEVTを施行する際には、同多型の判定が有用である可能性が示唆された。

現在、唾液や血液1μlから約50分で同多型を判定できる仕組みを確立しており、遺伝子検査を急性期の脳卒中医療へ広く導入すべきか検討する必要性が高いと考えられる、と研究グループは述べている。

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