治療困難な腱板断裂に対し、関節鏡を用いた術式を開発
関西医科大学は7月1日、縫合不能な腱板断裂に対する関節鏡視下小胸筋移行術に関する調査結果を発表した。この研究は、同大附属病院スポーツ医学センター山門浩太郎センター教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Arthroscopy」に掲載されている。

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肩腱板断裂は、国内で年間1万5,000件以上の手術が行われている頻度の高い疾患である。安静時痛や夜間痛など、日常生活に支障をきたす症状が特徴である。手術を行う場合、多くの腱板断裂は比較的容易に修復できるが、縫合不能の肩甲下筋断裂を合併する腱板断裂は頻度こそ少ないものの難治性である。人工関節が必要になる場合もあるため、効果的な治療法が求められていた。
研究グループは2013年、低侵襲な術式である「関節鏡視下小胸筋移行術」を開発し、臨床経験を蓄積してきた。「移行術」とは機能を失った筋肉の代わりに他の部位の筋肉を移植する術式のことで、筋肉の付着部位(停止部)を移動させることから「移行」と称される。今回、この術式の成績を報告するとともに、術式の限界を明らかにするため予後予測因子を統計学的に解析した。
術後症状は有意に改善、重篤な合併症の報告なし
研究では74例(平均年齢69.4歳)の総合スコア、肩の可動域、疼痛ポイントを最低24か月間追跡した。結果、全てにおいて有意な改善が得られ、重篤な合併症は見られなかった。また、多変量回帰分析において、総合スコアと挙上角度の予測因子は、それぞれ術前の外旋角度と挙上角度であり、肩甲下筋断裂の重症度は有意な要因ではなかった。
人工関節となる症例に対し、新たな治療の選択肢となる可能性
今回の研究により、関節鏡視下小胸筋移行術は、肩の痛みと機能の改善に有意な効果をもたらすことが示された。また、肩甲下筋断裂の重症度が予後因子として有意とならなかったことから、重症度の高い症例も治療対象となりうる可能性がある。「今回の研究結果により、やむなく人工関節を選択されていた症例に対する治療法の選択肢が拡がると期待される」と、研究グループは述べている。
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