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統合失調症の人は「グレア錯視」が一般の人より明るく見えている可能性-豊技大ほか

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2025年07月22日 AM09:10

統合失調症の人は、錯視に対して一般人とは異なる反応を示すことが知られていた

豊橋技術科学大学は7月1日、統合失調症のある人は一般の人と比べて「グレア錯視(glare illusion)」という錯視を、より知覚しやすいことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科情報・知能工学系認知神経工学研究室と、名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学専攻星野研究室との研究グループによるもの。研究成果は、「Schizophrenia Research: Cognition」に掲載されている。


画像はリリースより
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ヒトは日常生活の中で、周囲の明るさや物体の形、大きさなど、さまざまな視覚情報をもとに世界を認識している。しかし、見ている世界は物理的な光や刺激をそのまま知覚しているわけではなく、脳が補完や解釈を加えることで作り出されている。このような実際の物理的刺激とは異なって見える現象を「錯視」と呼ぶ。錯視の感じ方には個人差があり、その見え方を研究することで、知覚のしくみを理解する手がかりにつながる。

近年、統合失調症のある人は、錯視に対して一般の人とは異なる反応を示すことが知られてきた。統合失調症は現実の捉え方に変化が生じる精神疾患で、幻覚や妄想といった症状のほか、注意や感情、社会的なやりとりにも影響が出ることがある。こうした脳の情報処理の違いが、視覚にも影響を及ぼしている可能性がある。

30人の統合失調症の人と一般人を対象に、「グレア錯視」をどのように知覚するか検証

そこで研究グループは今回、特に「明るさの錯視」のひとつであるグレア錯視に注目した。グレア錯視とは、周囲に明るさのグラデーションがあると、中央の領域が実際よりも明るく見える現象を指す。例えば、ライトが光っているような見た目になり、過去の研究では、より明るく見えるだけでなく、輝いて知覚されることも報告されてきた。

研究では、30人の統合失調症のある人と34人の一般の人を対象に、グレア錯視をどのように知覚するかを実験で調べた。参加者は、タブレットPCのディスプレイ上に呈示された2つの図形を比較し、中央の領域の「どちらがより明るく見えるか」を判断する課題に取り組んだ。実験には、さまざまな明るさを持つ図形が使われた。また、実験は参加者が普段よく過ごす部屋で行われ、外から太陽の光が直接ディスプレイに当たらないように設定し、ディスプレイの輝度(物理的な明るさ)は正しく出力されるように厳密に調整した。

統合失調症のある人は、グレア錯視がより明るく見えやすいと判明

実験の結果、統合失調症のある人は、一般の人に比べ、グレア錯視がより明るく見えやすいことがわかった。このグレア錯視の感じやすさは「夕方になると目が疲れやすいとどの程度感じますか?」といったアンケート結果との関連は見られなかった。そのため、「単に目が疲れやすい人だから明るさの錯視を知覚しやすかった」というわけではないと考えられた。また、各群内での個人差も統合失調症のある人たちのほうが大きかった。

統合失調症に特有の視覚処理の違いが影響している可能性、疾患の多面的な理解を目指す

なぜ、錯視を明るく見えやすいのかという点について研究グループは「統合失調症に特有の視覚処理の違いが影響している」と推察した。しかし、今回の結果だけで診断や予測に使えるとは言えず、あくまで視覚的な傾向の一端を明らかにしたものであるため、今後も慎重な議論が必要だ。

本成果は、統合失調症における視覚処理の特性をより深く理解するための基礎となるもの。今後は、錯視と脳機能の関係性をより詳しく明らかにし、視覚認知の観点から統合失調症を多面的に理解することを目指す、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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