同一人物における食事ごとの食塩摂取量の変動については未解明だった
東京大学は6月29日、日本人成人2,757人から得られた延べ6万食以上の食事データを用いて、食塩摂取量が多い食事の状況と食品の種類を明らかにしたと発表した。今回の研究は、同大大学院医学系研究科社会予防疫学分野の篠崎奈々助教、村上健太郎教授、佐々木敏東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity」に掲載されている。

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食塩の過剰摂取は世界的な課題だが、中でも日本では特に食塩摂取量が多いことが知られている。減塩を目的とした栄養教育やキャンペーンでは、食事の状況(いつ、どこで食べたらよいか)や、食品の種類や量(何をどれくらい食べたらよいか)に関するメッセージがよく使われている。実際、これまでの研究では、外食や飲酒の頻度が高い人は、そうでない人に比べて食塩摂取量が多いことが示されている。
しかし、こうした異なる個人間の比較ではなく、同じ人のなかで食事ごとに食塩摂取量がどう変わるのか、すなわち「どのような食事をすると、その人の食塩摂取量が多くなるのか」については、これまで十分に明らかにされていなかった。この疑問に答えるには、食事に関する情報をリアルタイムに繰り返し収集する「生態学的瞬間評価(ecological momentary assessment)」という手法が有効と考えられる。そこで今回の研究では、生態学的瞬間評価を用いて、各食事における食塩摂取量と関連する食事の状況や食品摂取の特徴を調べた。
日本人2,757人の食事の状況・食品の種類と量を記録、延べ6.3万食を解析
今回の研究には、18~79歳の日本人男女2,757人が参加した。各季節に2日ずつ、合計8日間にわたり、すべての食事について、食事の状況、すなわち食事の種類(朝食・昼食・夕食)、勤務日かどうか、食事場所、一緒に食べた人数と、食品の種類と量を記録してもらった。記録内容にもとづき、一般に減塩政策で控えることが推奨されている食品(汁物、漬物、加工された肉や魚介類)と、積極的に取ることが勧められている食品(果物、減塩調味料、ハーブやスパイス、酢やかんきつ類の果汁、野菜)の摂取状況を調べた。さらに、日本人の食塩摂取量と関連があると考えられる、主食の種類(米飯、パン、めん、その他の主食、主食なし)とアルコール飲料の有無についても分析した。食塩摂取量への影響が小さい間食は除外し、延べ6万3,239食を解析対象とした。
「非勤務日」「めん類」などの条件で摂取量多く、「公園・車での食事」「果物」などで少ない
その結果、1食あたりの食塩摂取量は、昼食や夕食、仕事や学校が休みの日、レストランなどの外食、だれかと2人で取る食事、秋や冬に多い一方で、公園や車などでの食事や夏に少ない傾向があった。
また、食塩摂取量は、主食(特にめん類)や汁物、漬物、減塩調味料、ハーブやスパイス、酢やかんきつ類の果汁、中程度~高度に加工された肉や魚介類(ソーセージやかまぼこなど)、アルコール飲料を含む食事で多い一方で、果物を含む食事では少ない傾向があった。また、塩を使った調味料や野菜の使用量が多いほど、食塩摂取量も多い傾向が見られた。
今回の研究は、食事の状況や食品の種類と食塩摂取量の関連を、生態学的瞬間評価を用いて明らかにした初めての研究である。「今回の研究の成果は、日本人の食塩摂取量を減らすための、具体的かつ実践的な対策の検討に役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。
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