国際的な低栄養診断枠組みGLIM基準、現場での実装状況など大規模検証は限定的
三重大学は11月13日、GLIM基準で定義された低栄養が30日・60日死亡と有意に関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の清水昭雄助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Nutrition」に掲載されている。

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入院患者の低栄養は機能回復遅延や死亡率上昇に関連し、早期スクリーニングと介入が推奨されている。GLIM基準は国際的な低栄養診断の標準化枠組みであるが、現場での実装状況や予後予測の有用性の大規模検証は限られていた。2024年6月、日本の急性期包括払い制度(DPC)でGLIM評価の実施が推奨されたことは、実装可能性と予後妥当性を検証する好機となった。
17万4,439例対象、DPC請求データによる後向きコホート実施
今回、研究グループは日本全国のDPC請求データによる後向きコホートを実施した。18歳以上の成人・全国のDPC病院入院患者17万4,439例を対象に主要アウトカムは30日・60日死亡を設定した。共変量として診断群、年齢、性別、病床規模、入院経路などを調整した。GLIM基準で評価に基づいて「低栄養」「非低栄養」「未実施」「未記載」に分類し、Cox比例ハザード回帰分析でハザード比と95%CIを推定した。感度分析として6月入院コホートでの最大92日追跡、修正ポアソン回帰による院内死亡のリスク比も算出した。
GLIM低栄養は30日・60日死亡上昇と関連
研究の結果、GLIM低栄養は30日死亡(HR=1.46、95%CI 1.33-1.60)、60日死亡(HR=1.46、95%CI 1.34-1.59)の上昇と関連した。
GLIM評価の未実施もリスク高、食事摂取量・筋量評価に課題も判明
評価未実施・未記録も非低栄養より高リスクであった。さらに、評価完了者9万321人では「食事摂取量低下」、「筋量低下」が最も未評価であった。
栄養ケアの質指標としてGLIM評価の確実な実施を位置づけること、筋量評価の簡便化、摂取量把握の標準化が実装促進に有用である。政策面ではDPC下でのインセンティブ設計や、多職種連携・情報入力の省力化が鍵となる、と研究グループは述べている。
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