ALSとの関連性が注目されるヒートショックタンパク質、具体的関与や詳細は未解明
岡山大学は7月1日、家族性筋萎縮性側索硬化症(家族性ALS)の日本人家系の解析の結果、ヒートショックタンパク質であるDNAJC7の両アレル性病的バリアントが家族性ALSを引き起こすことを明らかにしたと発表した。今回の研究は、同大学術研究院医歯薬学域(医)脳神経内科学の山下徹准教授、石浦浩之教授、医学部の横田修客員研究員、学術研究院医歯薬学域(医)精神神経病態学の髙木学教授、岡山理科大学生命科学部医療技術学科の逢坂大樹准教授(研究当時 岡山大学薬理学助教)、岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)薬理学の細野祥之教授、南岡山医療センター原口俊医長、慈圭病院の安田華枝医長、東京都医学総合研究所の長谷川成人参事研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Acta Neuropathologica」に掲載されている。

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ALSは進行性の運動ニューロン疾患で、TDP-43というタンパク質が細胞質に異常に蓄積することが多くの症例で確認されている。近年、TDP-43を含むタンパク質の品質を維持管理しているヒートショックタンパク質とALSの関係が注目されてきていたが、どれだけ関与するかなど詳細は明らかではなかった。
日本人ALS家系でDNAJC7の病的バリアントを同定、剖検脳での発現減少を確認
今回、研究グループは日本人ALS家系(3人の発症例)において、DNAJC7のフレームシフト型両アレル性の病的バリアント(c.518dupC)を同定した。この家系では、剖検脳組織で、TDP-43蓄積・神経脱落・グリア増殖が顕著であり、一般の孤発性ALSと区別のつかない病理像を示していた。加えて、剖検脳のRNAシークエンスと免疫染色により、DNAJC7のRNAとタンパク質の発現の有意な減少を確認した。
DNAJC7のTDP-43凝集抑制を細胞で確認、機能低下でゼブラフィッシュに運動障害
また、細胞モデルでは、DNAJC7をノックダウンするとTDP-43の凝集体分解が抑制されることを確認した。一方、DNAJC7を過剰に発現した細胞ではTDP-43の凝集分解が促進された。ゼブラフィッシュALSモデルでは、dnajc7をノックダウンするとTDP-43凝集が増加し、運動発達障害・死亡率増加が確認された。
DNAJC7や関連HSP40/HSP70がALS治療標的となる可能性示唆
これまでDNAJC7は「ALSのリスク遺伝子」とされてきたが、今回の研究はDNAJC7の両アレル性の病的バリアントが家族性ALSを引き起こすことを示した世界初の報告である。また研究結果から、DNAJC7とその関連するヒートショックタンパク質群(HSP40/HSP70)がTDP-43の凝集を抑制する可能性が示唆され、ALS治療標的となる可能性が示唆された。「DNAJC7を含めたヒートショックタンパク群の制御を目指した研究をさらに進めたい」と、研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース


