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フレイル尺度CFS、心不全患者の機能・死亡リスクを簡便かつ高精度に評価-順大

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2025年10月29日 AM09:30

複雑なフレイル評価の課題解消へ、ベッドサイドで使えるCFSの有用性検証

順天堂大学は10月20日、心不全患者における臨床的フレイル尺度(CFS)と退院後の予後との関連を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環器内科学の中出泰輔非常勤助教、藤本雄大大学院生、真優スレーシュワル大学院生、赤間友香大学院生、末永祐哉准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of the American College of Cardiology(J Am Coll Cardiol)」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
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フレイルとは、加齢と共にみられる心身の脆弱性を指し、身体的な衰え(身体的フレイル)に加えて認知機能の低下(認知フレイル)など多面的な側面があり、評価方法も多数存在して複雑化し多くの時間を要する。そのため、日常診療において評価や活用が難しいという課題があった。

その中で注目されているのが、臨床的フレイル尺度(CFS)である。CFSは「見た目」に基づいてフレイルを9段階で評価する簡便な方法であり、短時間で判定できるため臨床現場で有用とされている。さまざまな疾患において予後と関連することが知られているが、心不全患者に特化した大規模研究で、予後との関連を示した報告は世界的にもなかった。一方、CFSは主観的な指標であるため、握力や歩行速度などの身体機能検査やMini-Cogなどの認知機能検査といった客観的な指標とどの程度一致するのかは、これまで十分に明らかではなかった。

今回研究グループは、CFSの臨床的な使いやすさとエビデンスの空白の両方に着目し、CFSが身体・認知の”弱り”をどれだけ正確に映すのか、そして心不全患者の退院後リスクをどこまで見分けられるのかを、心不全レジストリの一つであるJROADHF-NEXT研究の結果を用いて体系的に検証した。

心不全患者3,905例、CFSの上昇に伴う身体・認知機能低下と死亡リスク増加を確認

今回の研究では、全国87施設が参加する前向き多施設レジストリJROADHF-NEXT研究の結果を用いて解析を行った。

2019年4月1日~2021年4月30日に入院した心不全患者を登録し、退院前の安定期にCFSを実施した。登録4,016例のうちCFS欠測を除く3,905例(平均73歳、男性61.5%)を対象に、CFSを1–2/3/4/5/6/7–9の6群に層別し、あわせて身体機能(歩行速度、SPPB、椅子立ち上がり試験、握力、6分間歩行)と認知機能(Mini-Cog)を客観的に評価した。要評価項目は退院後2年の全死亡とした(追跡率84.9%)。

結果、CFSが高いほど身体機能・認知機能は段階的に低下した(全指標で傾向検定P<0.001)。2年間で725例(18.6%)が死亡し、CFSの上昇に伴い死亡率は一貫して増加した(ログランクP<0.001)。調整後Cox解析では、CFS4:HR2.29(1.33-3.92)/CFS5:2.97(1.71-5.17)/CFS6:3.58(2.04-6.26)/CFS7–9:6.59(3.73-11.63)(基準=CFS1–2)と段階的なリスク増加を示し、CFSを連続変数でみても1点上昇あたりHR1.42(1.33-1.52)と独立した関連を認めた。心血管死・非心血管死のいずれでも同様の傾向であった。

CFS追加で既存モデルの予後予測精度向上、客観的検査を追加のモデルより上回る

予後予測能の比較では、ベースラインモデル(MAGGICリスクスコア+logBNP)のAUC0.726にCFSを追加するとAUC0.752(△0.026、P=0.014)へ改善し、NRI0.277(0.101-0.454、P=0.002)を示した。さらに、SPPB+Mini-Cogを加えたモデルと比べても、CFSを加えたモデルの方が再分類改善(NRI0.281、P=0.002)を示し、ベッドサイドでの簡便評価が予後層別化に実用的であることが裏付けられた。

簡便なCFSを退院時評価に標準化、多職種連携と電子カルテアラートで予後改善へ

今回の結果は、退院前のベッドサイドでCFSを標準的に実施することが、現実的で効果的な第一歩になることを示している。短時間で評価できるため、高リスク患者を早期に把握し、退院計画や多職種連携(心臓リハビリ、老年科、在宅・地域支援)へ速やかに橋渡しできる。また、電子カルテにCFSを組み込み、スコア(研究ではCFS≥4を一つの目安)に応じた自動アラートを設定することで、介入の抜け漏れを防ぎ、転倒予防・栄養・口腔・服薬支援などの介入を迅速に開始できる。

「これらの運用により、CFSは予後に好影響を与え得る実践的ツールとして機能する。今後は、外来や他の循環器疾患への適用拡大、国際的妥当性の検証、および施設規模に応じた閾値の最適化を進め、CFSを標準ケアの中核へ定着させたい」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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