潰瘍性大腸炎とクローン病、1991年からの24年間で約10倍増加していた
東邦大学は9月19日、潰瘍性大腸炎とクローン病の有病者数が8年間で1.4倍に増加していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大、杏林大学、大阪公立大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Gastroenterology」に掲載されている。

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潰瘍性大腸炎とクローン病は再燃と寛解を繰り返す難治性炎症性腸疾患であり、日本では1991年と2015年に全国疫学調査が行われ、いずれも増加傾向が確認されてきた。2015年の調査では、有病者数は潰瘍性大腸炎が約22.0万人、クローン病が約7.1万人と推計され、1991年からの24年間で約10倍の増加が確認された。
2023年の潰瘍性大腸炎有病者数は約31.7万人、クローン病は約9.6万人と推計
研究グループは今回、全国病院リストにある内科、外科、小児科、小児外科の1万2,153診療科から、病床規模などを考慮した層化無作為抽出により3,583診療科を選定し、調査対象施設とした。この調査対象施設に対して2024年1月下旬に調査依頼状および資料を送付し、2023年1年間に受診した男女別の患者数(初診・再診を問わない)の回答を得た。最終的に回答を得た1,798診療科(診療科閉鎖を除いた3,538診療科に対する回答率50.8%)の情報をもとに、有病者数を推計した。有病者数の推計は前回、前々回の全国調査と同様に、診療科・病院規模を層とみなした層化無作為抽出による推計法を用いて実施した。
その結果、潰瘍性大腸炎の推定有病者数は31万6,900人(95%信頼区間:22万3,900~40万9,900)、クローン病は9万5,700人(6万1,100~13万400)となった。いずれも2015年からの8年間で約1.4倍に増加していた。人口10万人あたりの年間有病率は、潰瘍性大腸炎が254.8人(男性:297.5人、女性:214.4人)、クローン病が77.0人(男性:112.9人、女性:43.0人)だった。
公衆衛生面・医療経済面からも、継続的に有病者数を把握することが重要
今回の研究により、日本における潰瘍性大腸炎およびクローン病の有病者数が一貫して増加傾向にあることが示された。継続的に有病者数を把握することは、疾患の診断、治療、予防の全てに関わる基本情報であり、その情報を生かして保健医療施策に反映させることは、公衆衛生面・医療経済面からも重要と思われる。
「今後も、有病者数を含めた疾病負担の正確な把握のため、全国疫学調査を継続的に実施していく必要があると思われる」と、研究グループは述べている。
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