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生活習慣病は、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の頻度上昇に関連-京大ほか

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2020年05月21日 PM12:15

アジア人集団で、生活習慣病とSASのリスクに関連はあるか

京都大学は5月19日、滋賀県長浜市と共同で行った「ながはまコホート」事業において、肥満と生活習慣病がどのように睡眠時無呼吸症候群()と関連するかについて、アジア最大規模となる約7,700人のデータを分析し、生活習慣病に睡眠時無呼吸症候群がひそむことが明らかになったと発表した。これは、同大大学院医学研究科呼吸器内科学の松本健客員研究員、同附属ゲノム医学センターの松田文彦教授、同呼吸管理睡眠制御学の陳和夫特定教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Respiratory Journal」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

睡眠時無呼吸症候群は、日中の過度の眠気などで社会生活に重要な影響を与えるばかりでなく、心血管障害や糖尿病などの代謝障害の発生とも関連するため、近年多くの注目を集めている。また、肥満は生活習慣病発症予防、健康生活の最大の課題で、かつ睡眠時無呼吸の最重要要因とされる。しかし、肥満や生活習慣病と睡眠時無呼吸症候群との詳細な関連はわかっていない。

ながはまコホート事業は、同大と長浜市が共同して行っている市民の健康づくりと最先端の医学研究を目的として実施されている事業。5年ごとに一般の特定健診項目に加えて、遺伝子解析を含む血液検査や睡眠検査などのさまざまな検査が行われている。この事業において、睡眠呼吸障害(大部分は睡眠時無呼吸)の程度と肥満の程度、、メタボリック症候群)のありなしを調査。参加者には、「客観的な睡眠時間」の評価のために腕時計型の認証されている加速度計と睡眠日誌を7日間、「」の評価のためにパルスオキシメーターを4日間、それぞれ自己測定を依頼した。最終的に7,713人が解析対象となった。

高齢になるほど、肥満になるほどSASの頻度は上昇

睡眠時無呼吸症候群のリスクは男女差、さらには閉経前後でも差が認められることが報告されているため、今回の研究においては閉経を含めた性差についても検討。その結果、睡眠時無呼吸の全体の程度と頻度は以下の通り。

正常範囲内41%(男性19%、閉経前女性74%、閉経後女性40%)
軽症47%(男性58%、閉経前女性25%、閉経後女性51%)
中等症10%(男性19%、閉経前女性2%、閉経後女性8%)
重症2%(男性5%、閉経前女性0%、閉経後女性1%)

高齢になるほど、肥満になるほどその頻度は高くなった。特に40歳未満では、肥満度が25kg/m2以上になると、治療が必要な中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の頻度は40倍にもなった。そして、男性>閉経後女性>閉経前女性の順に、同じ肥満度であっても睡眠時無呼吸症候群の頻度が高い結果であった。

「高血圧あり」で2.3倍頻度上昇、降圧剤の数が多い人は要注意

また、たとえそのような肥満がなくても、生活習慣病があると中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の頻度上昇との関連が高い結果だったことがわかった(高血圧ありで2.3倍、糖尿病ありで1.5倍、脂質異常症ありで1.5倍、メタボリック症候群ありで2.2倍)。これらの生活習慣病に肥満が重なると、さらにその関連度が上昇。つまり、肥満も生活習慣病もない人<生活習慣病だけある人<肥満だけある人<肥満も生活習慣病もある人、の順に、治療が必要となる中等症以上の睡眠時無呼吸症候群との関連度が高くなった。また、降圧剤の数が増えると睡眠時無呼吸症候群の頻度は有意に上昇することも判明した。一方で、眠気や主観的な睡眠の質の低下は中等症以上の睡眠時無呼吸症候群と関連は認められなかった。

これまで肥満がとりわけ睡眠時無呼吸症候群の頻度上昇と関連することが注目されていたが、今回の結果からは、肥満がなくても生活習慣病があればその頻度上昇に注意する必要があることがわかった。「アジア人は欧米人よりも肥満が少ないため、睡眠時無呼吸症候群が少ないと思われていたが、他の民族での研究と比較しても、その頻度に大きな差はなく、やはり睡眠時無呼吸症候群の存在に注意する必要がある」と、研究グループは述べている。

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