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バース症候群、ミトコンドリア機能改善薬が新たな治療法となる可能性-東北大

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2025年07月25日 AM09:30

TAZ遺伝子変異によるバース症候群、骨格筋症状に対する有効な治療法は未確立

東北大学は7月1日、バース症候群の患者から採取した皮膚の細胞およびiPS細胞から作った筋肉細胞を用いて、MA-5がバース症候群の病態を改善することを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科病態液性制御学分野および医工学研究科分子病態医工学分野の阿部高明教授、医学系研究科病態液性制御学分野の頓宮慶泰氏、東北大学病院の豊原敬文准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The FASEB Journal」に掲載されている。


画像はリリースより
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バース症候群は、TAZ遺伝子の変異により引き起こされる希少な遺伝性疾患で、この変異を持った男性で発症する。この病気は、心筋症、骨格筋障害(筋力低下)、好中球減少症、成長遅延、運動障害などのような症状を特徴とする。

TAZ遺伝子はカルジオリピン(ミトコンドリア内膜の主要なリン脂質)の構造変化に関与しており、その機能不全によりミトコンドリアのエネルギー産生が障害される。現在の治療法は主に症状を和らげる治療に限られており、重篤な心筋症に対しては心臓移植が行われることもある。しかし、バース症候群の骨格筋の症状に対する有効な治療法はまだない。

ミトコンドリア機能改善薬MA-5、患者由来皮膚細胞のATP産生増加・細胞死抑制

研究グループは、独自に開発したミトコンドリア機能改善薬MA-5がバース症候群の治療に有効である可能性を検討した。MA-5は、ミトコンドリアのクリステ接合部に存在するミトフィリンに結合し、ATP合成を促進する。

患者由来細胞での検証では、4人のバース症候群の患者提供の皮膚細胞を用いて、MA-5の効果を検討した。MA-5はすべての患者の細胞でATP産生を増加させ、酸化ストレスによる細胞死を抑制した。

患者iPS細胞から筋肉細胞作製、MA-5添加でミトコンドリア機能低下改善し機能回復

iPS細胞由来筋肉細胞での解析においては、バース症候群患者提供の細胞を用いてiPS細胞を作製した。これを筋肉細胞に分化させ、詳細な解析を行った。バース症候群モデルでは、iPS細胞由来筋芽細胞においてミトコンドリア機能が低下し、細胞のタンパク質合成機能に異常が生じ、機能低下が見られる状態となっていた。MA-5添加により、筋肉細胞のミトコンドリア機能と細胞のタンパク質合成機能が改善した。遺伝子発現解析の結果、MA-5は細胞のタンパク質合成に関連する遺伝子の発現が正常化した。これにより筋肉細胞の機能が回復した。

ショウジョウバエモデルで筋肉組織の異常構造減少し、運動能力が有意に改善

ショウジョウバエモデルでの検証では、バース症候群モデルショウジョウバエにMA-5を投与したところ、運動能力が有意に改善し、心拍数の異常増加が軽減した。MA-5は骨格筋のミトコンドリア構造異常を改善した。ショウジョウバエの筋肉組織の電子顕微鏡画像において、正常な筋肉組織では規則正しいミトコンドリア構造が観察されるが、バース症候群モデルではミトコンドリア内部に異常な構造が認められた。MA-5治療後では、これらの異常構造が減少し、正常に近い状態に改善した。

MA-5がATP産生を効率化するメカニズム解明

分子メカニズムの解明について、細胞内におけるタンパク質の相互作用を調べると、MA-5がミトフィリンとATP合成酵素の相互作用を促進した。この相互作用促進により、ATP合成酵素の二量体化と超複合体形成が起こり、ATP産生が効率的になる。

日本で臨床試験が進行中、新しい治療選択肢として期待

MA-5がバース症候群モデルショウジョウバエの心筋症状(心拍数異常増加軽減)と骨格筋症状(運動能力改善)の両方を改善した結果から、バース症候群の心臓と筋肉の両方の症状を改善する可能性が示された。「MA-5は飲み薬として開発され、現在日本で臨床試験が進行中である。将来的にバース症候群の新しい治療選択肢となることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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