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月経前症状、eヘルスリテラシーが高い女子高生は軽い傾向-近大

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2025年07月25日 AM09:10

思春期の月経前症状とeヘルスリテラシーの関連は?

近畿大学は6月30日、仙台市内の女子高校生909人を対象に、eヘルスリテラシーと月経前症状や心身の健康状態との関連について調査した結果を発表した。この研究は、同大東洋医学研究所の武田卓所長・教授らを中心とする研究グループによるもの。研究成果は、「JMIR Pediatrics and Parenting」に掲載されている。

近年、若年層ではSNSや検索サイトを通じて健康情報を収集することが一般的となっている。一方で、インターネット上には正確な情報だけでなく誤情報も多く存在しており、情報の真偽を見極め、適切に活用する能力、いわゆる「eヘルスリテラシー」の重要性が高まっている。若年世代の中でも、特に高校生はインターネット上の健康情報への依存が高まっている。誤った活用をすると、思春期の心理的健康に影響を及ぼす可能性が示唆されている。

一方で、インターネットを高頻度で利用している高校生は、思春期特有の心理的苦痛、うつ、不安、孤独感、トラウマのリスクが高いことが知られている。令和3年(2021年)に実施された国内の高校生を対象とした調査では、心理的苦痛や孤独感が月経前症状の重症度と相関していることが示唆された。月経前症状は、不快な精神・身体症状が特徴で、女性のパフォーマンスを妨げることから最近特に注目されている疾患。これまで、思春期における月経前症状とeヘルスリテラシー、またメンタルヘルスの関連を扱った研究はなかった。

女子高生909人対象、eヘルスリテラシーと主要な健康項目/月経痛強度等との相関を分析

研究グループは、日本の女子高校生を対象にeヘルスリテラシーの現状と、月経前症状との関連を解明することを目指し、仙台市内の公立高校2校に在籍する女子高校生1,607人を対象に、令和6年(2024年)12月にWeb上で学校調査を実施した。eヘルスリテラシーのスコア以外に、心理的苦痛、孤独感、自己肯定感といった思春期の主要な健康に関する項目、月経痛強度のスコアなどについて調査を行い、月経周期が規則正しくあり調査に完全回答した909人について相関関係を分析した。

eヘルスリテラシーが高い生徒、孤独感や一部の月経前症状のスコアが低い

研究の結果、月経周期が規則正しくあり、調査票に回答した909例を解析したところ、約3人に1人(32.1%)が高い「eヘルスリテラシー」を有していることがわかった。eヘルスリテラシーが高い生徒は、孤独感が有意に低く(p=0.02)、自尊感情が有意に高い(p<0.001)ことも明らかになった。また、月経前症状のうち「圧倒される、もしくは自分をコントロールできない感覚」が、eヘルスリテラシーの高い生徒では有意に低く(p=0.026)、月経前症状による対人関係障害が有意に低い(p=0.045)結果となった。さらに、多変量解析を実施した結果、「高い自尊感情」が「高いeヘルスリテラシー」と独立して有意に関連している(p<0.0001)こともわかった。

日本のeヘルスリテラシーは海外の同年代より低く、改善の余地あり

一方で、日本の女子高校生のeヘルスリテラシーの平均スコアは22.8点で、セルビアやブラジルの同年代と比較して2~5点低く、国際的に見ても改善の余地が大きいことが明らかになった。

今回の研究は、日本の高校生を対象にしたeヘルスリテラシーに関する調査としては初めてのもの。これまで十分に明らかにされてこなかった思春期における実態を明らかにする点で意義のある取り組みだとしている。また、月経随伴症状との関連を検討したのは、世界で初めての報告となる。同研究成果から、学校の学習プログラムにデジタルヘルス教育を取り入れることで、高校生の心身の健康状態を改善できる可能性が示唆される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

 

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