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排気ガスに含まれるPM2.5がアレルギー性鼻炎を増悪させるメカニズムを解明-兵庫医大

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2015年08月11日 PM03:00

ディーゼルエンジンのPM2.5がアレルギー性鼻炎を悪化

兵庫医科大学は8月3日、同大免疫学講座・善本知広主任教授らの研究グループが、京都大学大学院工学研究科 環境衛生学講座高野裕久教授との共同研究で、PM2.5の大部分を占める「ディーゼル排気微粒子」がアレルギー性鼻炎を悪化させるメカニズムを明らかにし、それを予防する薬剤と薬剤のスクリーニング法も開発したと発表した。

アレルギー性鼻炎の患者数は先進国を中心に増加の一途にあり、国内でも約40%もの国民がアレルギー性鼻炎に罹患しているとされている。しかし、アレルギー性鼻炎の発症機序には不明な点も多く、根本的治療法は確立していない。その理由のひとつとして、ヒトの症状と病態をよく反映したモデルマウスが確立していないことが挙げられる。

また、従来からのアレルゲンに加え、大気汚染の原因物質とされている浮遊粒子状物質で直径が2.5μm以下の微粒子状物質(Particulate Matter, PM; PM2.5)のアレルギー性鼻炎への影響が社会的にも問題視されている。近年、中国大陸から高濃度のPM2.5が飛来した時期と春のスギ花粉飛散時期が一致し、以前に比較してアレルギー性鼻炎患者数は急激に増加、症状の悪化を訴える患者が増加している。

さらに、国内の自動車からの ディーゼル排気微粒子が原因で、今日も喘息やアレルギー性鼻炎患者はその症状の悪化に悩まされているが、ディーゼル排気微粒子(PM2.5)のアレルギー性鼻炎を悪化させるメカニズムも不明で、治療・予防方法も全く確立されておらず、その解明が急務となっていた。

ディーゼル排気微粒子が原因の他疾患に対しての効果も期待

研究グループは、花粉特異的アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いて、ディーゼル排気微粒子のアレルギー性鼻炎に対する影響を検討。その結果、ディーゼル排気微粒子が鼻粘膜上皮細胞の“バリア機能”である「タイトジャンクション」(=隣り合う上皮細胞を強く結合する膜蛋白質)を破壊することで、花粉アレルゲンの透過性が亢進し、それによって少量の花粉でもアレルギー性鼻炎症状が重症化する可能性が生じることを明らかにした。

さらに、鼻粘膜上皮細胞のタイトジャンクションを破壊する正体は、ディーゼル排気微粒子に含まれる炭化水素や有機物質、硫化塩などの「」であることを解明。抗酸化剤N-アセチルシステインがタイトジャンクションの破壊を抑制し、アレルギー性鼻炎症状の悪化を予防できることを明らかにした。このことにより、「新規アレルギー性鼻炎」の治療・予防薬のスクリーニング法を確立することが可能になったという。

このスクリーニング法はアレルギー性鼻炎に留まらず、ディーゼル排気微粒子が原因となって発症する呼吸器疾患(喘息や慢性閉塞性肺疾患など)や皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など)、神経疾患、循環器疾患などに対しても効果が期待されるという。

なお、今回の研究成果は、アレルギー学会誌「Clinical&Experimental Allergy」電子版に7月23日付で掲載されている。

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兵庫医科大学 ニュースリリース

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