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わずか「40秒」の高強度間欠的運動で、酸素消費量と大腿部の筋活動が増大-早大

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2024年04月16日 AM09:00

「高強度間欠的運動」の筋肉への影響は不明だった

早稲田大学は4月12日、トレーニング効果を生み出す「最少量」のメカニズムについて、強度の工夫によって短時間でも大きな運動効果をもたらし得ることを発見したと発表した。この研究は、同大スポーツ科学学術院の川上泰雄教授、国立スポーツ科学センターの山岸卓樹研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Medicine & Science in Sports & Exercise」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

近年、トレーニング効果を生み出す「最少量」の研究が盛んに行われている。最新知見では、わずか40秒の高強度間欠的運動(20秒の全力運動を、休憩を挟んで2本実施)が、30分以上を要する中程度の強度の有酸素運動と同等、もしくはそれ以上に最大酸素摂取量を向上させることが明らかになっている。一方、間欠的運動の時間を減らした場合(10秒を2本、あるいは20秒を1本)は同様の効果が得られないことも確認されているが、その理由は明らかになっていない。

さらに、高強度間欠的運動に関する研究では、エネルギー代謝に主眼を置いたものが多く、筋肉に対する影響については不明だった。全身持久力や筋力を高めるトレーニングの最少量の解明や、筋肉への影響が明らかになれば、日本国内のみならず世界各国の人々の運動不足の解消や、健康増進、疾病予防につながることが期待される。

20秒の全力スプリント2本で有酸素性エネルギー代謝・大腿部の筋活動が増大

研究グループは今回、トレーニング効果を生み出す「最少量」の解明を目指し、異なる高強度間欠的運動中の全身・局所のエネルギー代謝、大腿部の筋活動について多角的に検証した。同研究で用いた運動課題は「10秒の全力スプリントを80秒の休憩時間を挟んで4本」と「20秒の全力スプリントを160秒の休憩を挟んで2本」の2種類。いずれの運動課題も自転車エルゴメータを用いて実施し、総運動時間(40秒)とスプリント時間と休憩時間の比率(1:8)は運動課題間で統一した。

その結果、「10秒以上のスプリントを反復した場合、2本目以降は全身および筋肉の酸素消費量の増加が頭打ちになる」「筋肉の酸素消費量は10秒と比較し、20秒スプリントで増大する」「いずれの運動課題も大腿部8筋の活動を有意に増大させる」ということがわかった。

高強度運動の反復回数と酸素消費量増加は比例せず、いずれの運動でも大腿部の筋活動増

これらの結果から、「10秒以上の全力スプリントを反復する場合、全身・筋肉の有酸素性エネルギー代謝を高めるためには2本で十分」「総運動時間(40秒)を運動課題間で統一した場合、スプリントの本数を減らしてスプリント1本あたりの時間を長くすることで、筋肉の酸素消費量を最大限に高められる」「わずか40秒の高強度間欠的運動で、大腿部の主要な筋群の活動が高まる」ということが明らかになった。

今回の研究で用いた手法は、呼気ガス分析法(全身の酸素消費量の分析に使用)、近赤外線分光法(大腿部の筋肉の酸素消費量の分析に使用)、MRI T2マッピング法(大腿部の筋活動の分析に使用)と呼ばれるもの。いずれの手法も世界的に用いられているが、これらの手法を統合して一つの研究に落とし込んだ例は世界的にも極めて限られていた。今回の研究で、それが初めて実現したと言える。

疾病予防や大腿部の筋肉量減少を食い止める一助となる可能性

今回得られた知見は、日本をはじめ、世界各国の運動実施率の改善に資するものと言える。WHOの身体活動に関する最新ガイドラインでは、1週間あたり150分以上の有酸素運動や週2回以上の筋力トレーニングが推奨されている。確かにWHOの推奨は理想的なものかもしれないが、多忙な現代社会において、その推奨事項を満たすことは決して容易ではない。

また同研究により、20秒の全力スプリント2本の実施で有酸素性エネルギー代謝、そして大腿部の筋活動を十分に高められることを明らかにされた。週に1~2回程度、定期的に同運動を実施することで、全身持久力の指標である最大酸素摂取量や大腿部の筋肉量・筋力の改善が期待できる。最大酸素摂取量の改善はアスリートの競技力のみならず、一般成人においても疾病予防につながることがこれまでの研究で明らかにされている。さらに、大腿部の筋肉量は加齢の影響を最も受けやすいと言えるが、同研究で用いた運動様式は、加齢に伴う大腿部の筋肉量の減少を食い止める一助となることが期待される。

今後は、強度を落とした運動でも適切な効果が得られるかを検証することが必要

一方、同研究では高強度間欠的運動に対する一過性の生理学的な応答を検証したが、実際にトレーニングの効果を確かめるためには同研究で用いた運動を、少なくとも数週間~数か月間実施し、その前後で効果検証をする必要がある。また、20秒の全力スプリントを2本と運動時間は極めて短いが、特に高強度の運動に慣れていない人にとってはハードルが高い可能性がある。同研究では、全力スプリント中の全身、筋肉の酸素消費量の増大が概ね15秒で頭打ちになることも確認されたことから、運動時間を30秒(15秒×2本)と、さらに短くすることも可能だと考えられる。さらに、短時間であっても全力を出すとそれ相応の身体的負担が伴う。そこで、今後は少し発揮パワーを抑えた(強度を落とした)運動でも、適切な効果が得られるかを検証する必要がある。

「高強度間欠的運動は、集中して高めの強度で短い時間だけ繰り返し行う、という方法だが、その具体的な強度や時間、回数についての最適解は明らかではなかった。本研究の結果はアスリートの効率的なトレーニングにつながり、一般人が日常生活に運動を取り入れるための参考になるものと考えられる」と、研究グループは述べている。

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