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NASH治療用アプリによるデジタル療法は有効、探索的臨床試験結果-東大病院ほか

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2023年01月26日 AM10:40

NASHは国内200万人程度、治療用アプリの開発・研究進む

東京大学医学部附属病院は1月24日、)に対する治療用アプリを用いたデジタル療法の多施設臨床試験を行い、NASHに対するデジタル療法の効果を世界で初めて示したことを発表した。この研究は、同院検査部の佐藤雅哉講師(消化器内科医)、消化器内科の中塚拓馬助教、建石良介講師、藤城光弘教授、小池和彦東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は「American Journal of Gastroenterology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

肥満を背景に発症するNASHは国内に200万人程度(予備軍は推定1,000万人以上)存在すると考えられている。現状では確立された治療法がなく、減量のための栄養指導や医師からの運動の励行など個々の施設の取り組みにとどまっている。また、栄養など減量に必要な専門的な知識を提供できる人材には限りがあるため、100万人規模の患者に対して持続可能な医療を提供するためには新しい治療のパラダイムが必要になる。

近年、デジタル療法への関心が高まっている。リアルタイムなデータの処理や通信が可能なスマートフォンの普及は、治療介入のための理想的なプラットフォームといえる。デジタル療法は、糖尿病やうつ病などの疾患に高い効果があることが示されており、海外では2010年代から糖尿病などを対象とした治療用アプリが保険収載された事例が出てきた。日本でも、2020年にニコチン依存症の治療用アプリが世界初の保険収載例となり、2022年には高血圧の治療用アプリが保険収載された。薬などと同様に医師が「処方」するスマホアプリを用いたデジタル療法が標準的な治療として認可されており、今後もさまざまな疾患に対する治療用アプリが登場することが期待されている。

診療GLに準拠し個別に治療ガイダンス提供のNASH治療用アプリ、有効性を臨床試験で検討

東京大学医学部附属病院消化器内科と、疾患治療用プログラム医療機器の開発を手がける株式会社CureAppは、デジタル療法の新たなNASH治療法としての可能性に着目し、NASH専用の治療用アプリの共同開発・研究を進めてきた。NASHに対するデジタル療法の試みは世界でも報告がない。今回の研究はNASHに対する治療用アプリを用いたデジタル療法の有効性を、探索的臨床試験により検討した。

研究で用いたNASH治療用アプリは、日々のモニタリングや生活習慣ログに基づき患者ごとに最適化された治療ガイダンスを提供し、NASHの治療に必要な患者の認知と行動の変容を促し、獲得した習慣の定着をサポートすることで、体重減少を通じたNASHの改善を導くようプログラムされている。また、患者の取り組みや生活習慣の改善状況が医師側にもアプリを通じて共有されるため、外来診療の限られた時間内においても、より効果的なサポートを行うことが可能になる。効果的なアプリのアルゴリズムは日本のNASH診療ガイドライン、肥満症診療ガイドラインに準拠して作成されている。

NASH患者19人対象に評価、48週間の介入で平均8.3%の体重減少達成

研究グループは、探索的臨床試験を、組織学的にNASHと診断された19人を対象に行った。治療用アプリを用いた48週間の介入により、平均8.3%の体重減少が達成され(NASH診療ガイドラインでは体重の7%の減量が推奨されている)、肝組織の脂肪化や炎症、風船様変性から成る病理学的スコア(NAS:NAFLD activity score)が試験開始時に比べて有意な改善を示した。試験前後のNASは、過去の研究における経過観察群のデータを元に設定した比較対照群との比較においても有意な改善を示した。

中等度以上の線維化を認めた患者の58.3%、介入後に線維化ステージが改善

NASHにおいて、肝硬変の程度を示す肝線維化が進行した患者は肝がん発症のリスクが高いこと、NASHにおける線維化ステージの改善は肝臓関連のイベントを低減させることが知られている。今回の研究では、デジタル療法により、試験開始前に中等度以上の線維化を認めた患者の半数以上(58.3%)において線維化ステージが改善し、肝線維化ステージに有意な改善も認められた。

薬事承認を目指した治験の実施を検討

研究で用いた「NASH治療用アプリ」は、現状確立された治療法の存在しないNASHを対象とした世界初の治療用アプリであり、NASHに対するデジタル療法の効果を世界で初めて示した。患者の認知と行動の改善を通じた減量によるNASHの治療が達成されれば、NASHにより生じる肝硬変や肝がんのみでなく、肥満がリスクとなり生じる他の疾患の予防にもつながり、日本の医療費削減への貢献も期待される。「今後はNASHに対する新医療機器としての薬事承認を目指した治験(第三相試験)の実施を検討している」と、研究グループは述べている。

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