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HCT1後GVHD既往歴が、HCT2移植前処置強度の判断材料になる可能性-自治医大

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2025年06月17日 AM09:00

MACとRICの使い分けや、最適な患者のタイプは不明だった

自治医科大学は6月3日、JSTCT/JDCHCTが実施する「造血細胞移植と細胞治療の全国調査」によるレジストリデータを用いて大規模症例解析を行い、2回目同種移植に前処置の強度が移植後成績に与える影響を検討し、その結果を発表した。この研究は、同大総合医学第一講座(血液科)大学院生の吉村一樹氏、分子病態治療研究センター 領域融合治療研究部の仲宗根秀樹教授を中心とした日本造血・免疫細胞療法学会(JSTCT)合併症ワーキンググループ(以下、研究グループ)によるもの。研究成果は、「American Journal of Hematology」に掲載されている。

(HCT)は造血器腫瘍を根治するための有効な治療法だ。しかし、移植は日和見感染症や移植片対宿主病()など、多くの合併症を引き起こす可能性があり、諸刃の剣の治療法とも言われる。

このような多くのイベントを乗り越えて移植しても、初回のHCT(HCT1)の後に造血器腫瘍が再発することもある。このような移植後に再発した患者に対し、諸々の状況が許せば2回目の造血幹細胞移植(HCT2)を行うことがある。HCTは前処置と呼ばれる強力な抗がん剤や放射線照射を残存する腫瘍撲滅の目的に行うが、合併症も引き起こすリスクがある。こうした合併症による非再発死亡は、HCT2では頻度がHCT1と比べて高いということが知られている。

そのため、強度減弱前処置(RIC)と呼ばれる従来の骨髄破壊的前処置(MAC)と比較して弱い前処置が用いられることがある。強度を弱めた前処置であるRICは、非再発死亡を減らす可能性がある一方で造血器腫瘍の再発を増やしてしまう可能性があるため、MACとRICをどのように使い分けるべきなのか、その最適な対象となる患者はどのような人なのかは十分にわかっていなかった。

HCT2を受けた成人患者2,478人を対象に、MAC群とRIC群を比較

研究グループは今回、JSTCT/JDCHCTが実施する「造血細胞移植と細胞治療の全国調査」によるレジストリデータを用いて大規模症例解析を行い、2回目同種移植に前処置の強度が移植後成績に与える影響に対する検討を行った。

同研究ではレジストリデータから2004~2018年にHCT2を受けた成人患者2,478人を抽出し、HCT2でMACを受けた群(856人)とRICを受けた群(1,622人)の比較を行った。

RIC群はMAC群より非再発死亡「低」、全生存率は有意差なし

多変量解析の結果、RIC群はMAC群と比較して非再発死亡が有意に低いことが示されたが(HR 0.83, 95% CI: 0.72-0.97, P = 0.018)、全生存率には全体では傾向はみられるものの有意な差までは見られなかった(HR 0.91, 95% CI: 0.82-1.01, P = 0.075)。

HCT1後に広範型慢性GVHDを経験した患者はRICが極めて有効、生存率も有意に改善

次に、患者背景をもとにしたサブグループ解析によりRICが予後に与える影響を解析したところ、HCT1後に広範型慢性GVHDを経験した患者において、RICが極めて有効であることがわかった。この群では、RICはMACに比べて非再発死亡を大幅に低下させ(HR 0.44, 95% CI: 0.29-0.67, P < 0.001)、さらに全生存率も有意に改善させた(HR 0.66, 95% CI: 0.49-0.93, P = 0.015)。

この生存改善効果は、広範型cGVHDの既往がない患者では見られなかった。このことから、「広範型cGVHDの既往がある患者は不可逆的な肝臓や肺などの臓器障害があるため強力な前処置(MAC)に耐えられないが、減弱した前処置(RIC)によってHCT2後の合併症リスクを減らすことで、臓器不全による死亡リスクが低減された」と推察された。

より適切なHCT2における前処置の選択が可能に

本研究により、2回目の同種造血幹細胞移植における移植前治療強度を決定する際に、1回目の移植後の慢性GVHDの既往歴が重要な判断材料となることが示された。この知見により適切なHCT2における前処置の選択ができるようになると考えられる、と研究グループは述べている。

 

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