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新型コロナ感染を抑える生体内分子としてHAI-2を発見-京大ほか

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2021年04月14日 PM12:15

感染成立に重要なTMPRSS2の生理的制御は不明だった

京都大学は4月12日、一部の生体内タンパク質分解酵素に対する生理的阻害物質HAI-2(hepatocyte growth factor activator inhibitor 2)が新型コロナウイルス()の感染抑制因子であることを発見したと発表した。この研究は、同大ウイルス・再生医科学研究所の橋口隆生教授らの研究グループが、国立感染症研究所の竹田誠部長、松山州徳室長、冨田有里子研究員、宮崎大学の片岡寛章教授、北海道大学の前仲勝実教授、福原秀雄准教授らの研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、「Journal of Virology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

現在、SARS-CoV-2が世界中で猛威を振るっている。ウイルス粒子の表面にはたくさんの糖スパイクタンパク質()が突起状に突き出ている。SARS-CoV-2はSタンパク質を使って、細胞表面に発現するACE2(アンジオテンシン転換酵素2)というタンパク質に結合することで感染をはじめる。ACE2に結合したSタンパク質は続いて同じ膜上に存在する生体内タンパク質分解酵素TMPRSS2による切断(開裂)を受けることで、細胞の膜との融合が促進され、感染が成立する。SARS-CoV-2だけでなく、2003年に流行したSARSコロナウイルスや2013年に中東で発見されたMERSコロナウイルスも、TMPRSS2を利用することが明らかになっている。生体内タンパク質分解酵素の活性は、通常、何らかのメカニズムで生理的な制御を受けているが、TMPRSS2の生理的阻害活性因子や、その制御とSARS-CoV-2感染との関わりについてはこれまでよくわかっていなかった。

HAI-2がTMPRSS2の機能制御を介して感染を制御

今回、研究グループは、TMPRSS2と類似の生体内タンパク質分解酵素であるマトリプターゼの生理的阻害活性因子HAI-2に着目した。HAI-2はがん細胞の造腫瘍性や組織浸潤に重要な宿主プロテアーゼHGFAの機能制御に重要な因子。すでに、HAI-2がTMPRSS2の生理的阻害活性因子でもある可能性が示唆されていたが、SARS-CoV-2感染に与える影響については、全くわかっていなかった。

まず、ヒト細胞を用いてHAI-2タンパク質を大量に発現精製する系を構築した。次に、発現・精製したHAI-2を培養液へ入れた状態で、SARS-CoV-2を細胞に感染させ、感染の阻害が起こるか調べた。その結果、添加したHAI-2の量に比例してTMPRSS2を介した感染が阻害されると判明した。

研究グループはさらに、HAI-2の発現を一時的に低下させた上で、SARS-CoV-2を感染させたときのウイルス増殖を調べた。ヒト気管支上皮由来のCalu-3細胞を用いてsiRNA法によりHAI-2の発現を一時的に低下させ、SARS-CoV-2を感染させた。培養上清に放出されるウイルスゲノムコピー数を調べたところ、HAI-2ノックダウン細胞では検出されるウイルスゲノムコピー数が数十倍に上昇することがわかった。以上の結果から、HAI-2がTMPRSS2の機能制御を介してSARS-CoV-2の感染を制御する生理的活性物質である可能性が示唆された。

新型コロナの病態解明や治療薬開発へ

SARS-CoV-2 感染症(COVID-19)についてはいまだ有効な治療薬が存在しない。創薬のターゲットを考えるには、ウイルスの増殖機構を分子レベルで詳細に知る必要がある。研究グループは、SARS-CoV-2が効率良く感染するために必要なTMPRSS2という生体内タンパク質分解酵素と、その生理的阻害因子HAI-2の結合様式や作用機序を今後詳細に解析し、いまだ不明な点の多いCOVID-19の病態解明と創薬ターゲット候補の作出へと展開する予定だとしている。

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