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従来より効率高い新規皮下膵島移植による糖尿病治療法開発-東北大

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2017年11月10日 PM12:45

従来の門脈内移植にはさまざまな問題点が

東北大学は11月8日、糖尿病治療のための簡便・安全・効果的な膵島移植法を新規に開発したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科移植再生医学分野の後藤昌史教授、同大大学院医学系研究科消化器外科の海野倫明教授、亀井尚教授、植松智海医師らの研究グループによるもの。研究成果は「Transplantation」に掲載されている。


画像はリリースより

糖尿病の先端治療として、脳死ドナーから提供された膵臓から抽出した膵島細胞を患者の消化管から肝臓への血管(門脈)内に移植する「門脈内移植」があるが、十分な効果を得るためには、複数回の移植が必要となる。また、移植された膵島によって血管が狭くなり門脈の血圧が上昇する場合もあり、しばしば移植の回数が制限されたり、出血や塞栓といった合併症が発生したりするなど、さまざまな問題点が指摘されていた。

bFGFを用いた皮下移植手法よりも移植効率高く

研究グループは今回、効率良く新生血管を誘導する新規素材「I型コラーゲン様リコンビナントペプチド()」を用いた新規の皮下膵島移植法を開発した。この手法では、まず移植予定箇所の皮下へRCPを投与し、予め十分な新生血管床を構築。その後、膵島を移植することにより、門脈内移植と同等の移植結果を得ることに成功した。塩基性線維芽細胞増殖因子()を用いた従来の皮下移植手法よりも移植効率が高く、また出血や炎症などの副作用も全く見受けられなかったという。

さらに、このRCPは人工的に産生したリコンビナント製品であるため製品の差が極めて小さく、安全性や安定性に優れた素材であり、医療応用に適していると考えられるという。現在、門脈内移植と同等の移植効果を発揮する皮下移植手法は他に存在せず、今回の研究が初めての報告となる。この新手法は糖尿病治療だけに留まらず、肝細胞移植など、皮下における新生血管不足が課題となっている種々の細胞移植療法への応用が期待される、と研究グループは述べている。

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